誰が一番大人っぽいか考えてみる。 ・・・ あゆ < 真琴 < 栞 < 美汐 < 名雪 < 舞 < 香里 < 佐佑理さん < 秋子さん ・・・ ・・・秋子さんやっぱり最強。 ======================== この世で一番・・・強いヤツ? ================== うーん・・・基準は名雪かな。 なんか普段香里と一緒に居ると子供っぽいが あゆや真琴と一緒に居るときはちゃんとしたお姉さんっぽく感じるもんな。 佐佑理さんはいつでもその・・・子供っぽいと言うと失礼だけど 人懐っこい感じで笑顔だし、背も低いけどなんて言うか 先輩としての威厳がある気がするな。 一番の問題は舞だ。どこに入れていいかわからん。一応先輩だから上にしといた。 でも香里の方がお姉さんって感じはある。 美汐と栞は両方とも大人しいし、色々悲しいことも経験してるから と言うかみんなしてるが、この2人は悟ってる感じがする・・・。 でも後輩だから悪いけどやっぱり下。 なのにあゆが一番下なのは、栞と比べたらお姉ちゃんって感じなのだが 俺が一番下にしたかったからだ。うわっはっは。 で・・・秋子さんはずば抜けてる。↑では佐佑理さんの次だが、具体的には 佐佑理さん < < < < < < < < < < < < 秋子さん いや、もっとそれ以上か? 別に佐佑理さんが低いわけじゃない。秋子さんがずば抜けてるのだ。 「おっ、なんか面白いこと考えてんな」 北川が小声で話しかけてくる。 今は授業中だ。 ノートの端っこに、俺の近くに居る上下ランキングを書いていたら やつが覗いてきたのだ。 「俺は美坂が一番上だと思うぜ」 それはお前の偏見だ。っておれもあゆを一番下にしてるから人の事言えないんだが・・・ ・・・ 「なんでボクが一番下なのぉーーーっっっ!?」 あゆが勢いよく叫んでいる。 「祐一、こんなことして遊んでたんだね・・・」 「・・・」 目を細く、口を尖がらせる名雪。 授業が終わったとき、名雪にばれてその部分を取られてしまったのだ。 そして意地悪く持って帰って本人たちに見せると言い出したのだ。 ・・・なんか俺の悪癖でも移ったか? 香里にも見られた。反応は冷たかった。 『・・・暇人ね』 以上。 これはこれで虚しかった。 その後北川が 『俺は美坂が一番上だと思うぜ!』 と何故か強調していた。 『どういう意味で言ってるのかわからないわ』 香里はため息をついて出て行ってしまった。 『おい、どこ行くんだよ』 『部活よ、部活』 『・・・』 そういえば香里が何の部活やってるのか未だに知らないな・・・ 名雪も知らないとか言ってたし。親友なら知ってると思ったんだが 香里はあまり人に物を言う人じゃないらしい。まぁこの際何でもいい。 「うぐぅ・・・ボク、栞ちゃんよりも年上なのに・・・」 未だにぶつくさ言っているあゆに話しかけた。 「ああ、おばさんだな」 「・・・それは違うと思うよ」 すねた口調であゆが言った。 「うぐぅ!ボク一番上だよ!」 「ほら、その反応が一番下っぽいんだよ。  大体何をどう間違えたら一番上とか考えれるんだ?」 「うぐぅ・・・祐一くんのいじわる・・・  もしかしてボクのこと嫌い・・・?」 ちょっと目が滲んで鼻をすんすん言わせながら目をこすりだした。 やば、ちょっと言い過ぎたかも。 「祐一、あんまりあゆちゃんのこといじめたらダメだよ」 「うぐぅ〜名雪さん〜」 ・・・やっぱり名雪はあゆの前ではお姉さんっぽいな。 こんなときでもこんなことを考えている俺だった。 「うぐぅ・・・絶対一番上だもん・・・秋子さんよりも凄いんだもん!」 別の意味でな。 「あら、呼びました?」 「わぁっ!」 「あ、お母さん」 振り返ると、買い物をしていた秋子さんが居た。 秋子さんは、雪の道をいつも通りに歩いてきた。 「あ、秋子さん危ないですよ」 「大丈夫で・・あっ」 どしゃっ。 「お母さんっ」 名雪が驚いて駆け寄った。 ・・・。 目が点になった。 秋子さんもやっぱり人間か。 「お母さん、大丈夫っ?」 「ええ・・・ちょっと腰を打ったみたい」 「ええっ?」 「大丈夫よ・・・靴がちょっとすべちゃっただけだから」 「秋子さん大丈夫ですか」 俺は秋子さんに手を差し伸べた。 「すみません祐一さん、ありがとう」 名雪は秋子さんに肩を貸して体を支えている。 確かにそんな大げさなことはないのだが、名雪は心配だったようだ。 「やっぱりボクが一番だもん・・・」 あゆはまだそんな事を言っていた。 「あゆちゃん、何が一番なの?」 「えっ!?」 秋子さんが問うていた。 別にフッツーのいっつも通りの笑顔で、いつも通りの癖で手を頬に当ててながら あゆを見て秋子さんは言っただけなのだろうが、なぜか俺には怖く見えた。 「あっ、いえっ、なんでもないですっ!」 あゆも何かを感じ取ったのか、あゆらしくない反応をする。 「そう」 「それより、秋子さん大丈夫ですかっ」 あゆが心配した。って遅いだろ。 「はい、大丈夫ですよ」 秋子さんは一人で立った。名雪はまだ支えたがっていたが、秋子さんに もう大丈夫だから、と窘(たしなめ)められていたようだ。 「それより、今日一緒に夕ご飯でもどうですか?」 秋子さんが得意げに誘っていた。 「あ、いえっ、大丈夫です。お気持ちだけいただいておきます」 あゆがあゆらしくなく丁重に断っていた。 「じゃぁね、楽しかったよ、またね、名雪さん、祐一くんっ!」 そう言うとあゆは振り返りながら夕焼けに染まる雪の町を走っていった。 「あいつ、よそ見しながら走ると・・・」 べしゃっ。 やっぱり。 うぐぅっ そんな泣き言をいいながら去っていくのを秋子さんも名雪も俺も、微笑みながら見送っていた。 「えっ、誰が一番お姉さんか、ですかっ?」 俺は今、屋上前の階段で、敷物の上で、佐佑理さんと舞と弁当を食べている。 おれは昨日起こったことを愚痴っていた。 「ああ・・・名雪にばれちゃってさ。俺は佐佑理さんは一番お姉さんっぽいと思うよ」 秋子さんを除いてですけど。 「あははーっ、そんな事ないですよ、舞のほうがお姉さんだよね、ねー?舞ーっ」 「・・・」 うんともすんとも言わずに卵焼きを頬張っている舞。 佐佑理さん、あなたに逆らってスミマセンが、間違いなくこいつは違います。 って言うか上とか下とかじゃなくて、右とか左って言うぐらいどこに居るのかわかんないです。 まぁ剣技に関しては秋子さんよりも上だとしても良いんだが・・・。 いや、包丁で裁かれたらさすがの舞も一太刀で終わりかも。 きぃんっ! からんからんっ!からからから・・・ 『・・・っ!』 夜中に響く舞の剣。 舞は剣を弾かれ、手を痺れに震わせていた。 『まだまだですね』 秋子さんは得意そうに、包丁を持っていつものポーズで笑っていた。 ・・・怖ぇよ。 「祐一さんっ、祐一さんっ?」 「はっ」 目が覚めた。 「どうしたんですか?」 「いやなんでもない。それより何?」 「やっぱり、舞が一番お姉さんですよねっ」 まだ言ってたんですか。 「舞、お前は一番お姉さんかっ?」 がーくーがーくー 体を大きく揺すってやるが、興味ないと言わんばかりに無表情な顔で、 と言うかなんかちょっと怖い顔で卵焼きを頬張っていた。 「舞は一番下らしい」 どかっ。 ぐはぁっ 「祐一さんっ」 いつもは縦に来るチョップが、今日は横から来た。 いい具合に打ち首な気分だった・・・ぜ。 「あははっ 舞、照れてる」 「・・・照れてなんかない」 今ので照れないと思うが、佐佑理さんにからかわれて舞は少しだけ赤くなっていた。 「よし、おれはもう行くよ、佐佑理さん、ありがとう、  ごちそうさまっ」 「どちらへ行かれるんですかっ?」 「遊びにっ」 「わかりました、また来てくださいねっ」 おれは廊下を走っていた。時間がないから急くのだ。 「・・・廊下は走ってはいけませんよ」 走っている横目に、見慣れた人が居た。 「天野か」 「・・・私は下なんですね」 がくっ! 「・・・なんでお前知ってるんだよ」 「相沢さんの従兄妹の方・・・水瀬さんから伺いました」 ってなんであいつは天野のこと知ってんだよ。 って言うかあいつはどういうつもりだよ。 『祐一に会ったら、叱っておいてね』 「水瀬さんが、そう仰っていたので」 名雪の、悪意なき笑顔が思い浮かぶ。 「ってお前はあいつのこと知ってるのかよ」 「相沢さんと水瀬さん、いつも隣にいますから」 「家からくっついてくるくっつき虫みたいにな」 「仲が良いんですね」 なんでそう持っていく。 「普段から、そうやって振舞える男女は、うちのクラスにも中々居ないものですよ」 「そういうもんか」 じゃぁな、と急いでいたのを忘れていたように再びおれは走り出した。 「家に帰ったら、真琴にも怒られて下さいね」 ぎくっ ・・・あいつが一番やっかいそうだ。 がらがらがらっ・・・! 静かな中庭に、うるさい鉄の音が響く。 校舎と中庭の間にある、冷風を遮る扉が開く音だ。 その向こうには、いつものように待っている少女が居た。 ・・・が、なんか機嫌が悪そうだ。 「・・・そんなこと言う人嫌いです」 おれはこれを聞くために、栞と笑うためにここに来てるようなもんだ。 「って待て、まだおれ今日何も言ってないぞ」 いきなり突っ込みどころ満載だった。 「もしかして・・・」 「お姉ちゃんから聞きました」 あいつら何手分けしてやっかいな種撒いてるんだよっ。 「祐一さん、そう言う風に思ってたんですねっ」 栞はすっかり拗ねてしまっていた。 「いや、だからあれはその・・・  ほら!バニラ買ってきたぞ!」 栞の大好きなバニラのアイスを掲げる。 「・・・」 が、今日は許してくれないらしい。 「祐一さん、嫌いですっ」 なんか今回は本当に嫌われてるっぽいなおれ。 「・・・ごめん、二度とあんな遊びはしないよ」 ちょっと反省した。 自分に悪意がなかったとしても、相手が傷ついたならそれは悪いことだったのだ。 「・・・」 栞はわずかにこっちを向いた。 「本当ですかっ・・・?」 ちょっとだけ笑ったような栞が、そう言ってきた。 「・・・ああ、ごめん」 「なら、許してあげますっ」 そういって、おれの手からバニラのアイスを奪い取るのだ。 それを取った栞は、何よりも嬉しそうだった。 今日の授業が終わって放課後になった。 「おい、名雪、何みんなに暴露して・・・」 しかし名雪はもうすでにそこに居なかった。 「あれ?名雪は?」 「部活よ」 香里が代わりにそう言った。 「あ、そういえばお前、なに栞にもちくって・・・」 「何?」 ・・・。 「なんでもないです」 香里は意地悪そうに笑って、教室を出て行った。 「日頃の素行が悪いからよ」 「ぐく・・・」 「相沢・・・おれはお前の味方だぞ・・・」 そこには何故かボコ顔の北川が居た。 お前・・・何されたんだ? 「ただいまー」 何もなく普通に家に着いた。 嫌に静まり返っている。秋子さんも居ないらしい。 普段より安全に帰れた道のり。そして静かな家。 ここまで自分が色々と自由にできそうな日は、逆に返って怖いものだ。 大体、真琴からしてみて考えれば、絶好の狩り日ではないか。 「どこに居る・・・?」 真琴も保育所からのバイトから帰ってきている頃だ。 リビングには居ないらしい。 恐る恐る階段を上る。 最後の段を上がりきろうと思った瞬間、何か紐のようなものが見えた。 しかし足は止まってくれない。 「ひっかかったっ!」 「うおっ!」 案の定、紐があってぴーんと伸び、おれを引っ掛けようとしたのだ。 「とと」 だがかろうじて避け、真琴がおれの無様な姿を見ようと乗り出してきたところにぶつかってしまった。 「へっ・・・」 「あ」 っと言う間に、真琴は階段から転がっていった。 うわぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!! どかっ! がたっ! ごろんっ! どーん! ・・・ 秋子さんが居なくてよかったと思う、俺。 「いったたたぁ〜・・・」 で済むものだからこいつも大したものだ。 その顔を細い目で覗き見てやる。 「真琴はっ、下じゃないっ!」 ・・・やっぱりこいつにもばれてんのか。 今だけはにっくき名雪だった。 「お前、こういうことしてる時点で子供っぽいってわかってるか〜?」 「何よ〜、祐一の馬鹿っ!」 正拳付きが顔に向かって飛んできた。 それをひょいっと交わすと真琴の拳が壁に当たった。 「いったぁ〜!」 「お前、家を壊す気か」 「うっくくっ・・・今日はこのくらいにしといてあげるわよっ!」 目に涙を溜めて、どこかへ走り去っていってしまった。 どうせ、肉まんでも買いに行って機嫌を直すつもりなんだろう。 せっかくの静かな家が、やれやれだった。 夕ご飯も風呂も終わって、名雪の部屋に行く。 ノックをすると、いつものようにはーいと返事が聞こえた。 「おれだよ」 「祐一?いいよ入って」 がちゃ 開けるとそこには相変わらずファンシーなワールドが広がっていた。 桜色のカーペットに、本棚の上には大量の時計たちが 朝のオーケストラの準備をしているように見えた。 布団にはけろぴーも座っていて、休憩中のようだった。 名雪は、床に座って机で勉強していた。 「椅子に座って勉強すればいいのに」 「なんとなく、床の方がいいんだよ、椅子に座ってると眠たくなっちゃうから」 って言うかお前はいつでもどこでも寝るだろうが。 「なんか言った?」 「いや」 「それよりどうしたの?」 「宿題やろうと思っただけだよ」 「そうなんだ、いいよ、隣座って」 「答え見せてくれ」 「・・・だめ」 即行で手のひら返された。 「自分でやってから、ね」 そういって名雪は笑った。 「そういえばお前、なにみんなにあれ見せびらかしてんだよ」 「え、なんのこと?」 今までの中で一番の笑顔のような気がする。別の意味で。 「このっ」 「いたっ」 おれは名雪にでこぴんしてやった。 「いつものお返し・・・だよ」 赤くなったおでこを手で押さえながら、舌を出して笑う名雪だった。 なんだか名雪らしくなくて、笑えた。 そしたら、名雪も笑った。 いつもより距離が短く感じた。 少しだけ、大人のドキドキを感じた。 みんなが笑っていられればそれでいい――― この些細な幸せが、続きますように――― 外を見たとき、北の町の夜星がおれたちを照らすように光った。 星に願いを想うのは初めてだっただろうか。 名雪もいつの間にか眠ってしまっていた。 「くー・・・」 いつもの寝息を立てて、気持ち良さそうに机に伏していた。 名雪に毛布をかけて、電気を消した。 俺も部屋に戻るか。 自分の部屋に戻ったとき、暗い中に開けっ放しのカーテンから まぶしく光る月の光が降り注いでいた。 綺麗な星空だ。 今日は星を見て寝よう。 今日の出来事を思い返しながら。 そうしておれは、いつものようにまた眠りにつくのである。 =========================================================================== レッド様です。お疲れです。(逆じゃね?) ちいさなほしのゆめに続いて(?)出してみました 多分他のサイトだと、秋子さんが最強ってのを もうちょっと面白おかしく書いてると思うんですが 私も真似しようとしてできませんでした なんか、私の小説の書き方はオチ方が一定になってきてしまった気がするのでw 何が書きたかったのかよくわかんない作品になってしまいました でも、日常は常に意味があるようでも特に意味はないんですよね そして、意味がないように見えて意味のある毎日が繰り返されていくのでしょう やっぱりよくわかんないことになってしまいましたw それでは。 written in 2006.7