------------------------------ 決 意 -------------------------------- 丘で遊んでいた倫ちゃんやみ〜ちゃん、りかぼーは、遊ぶのも止めてその場でじっと 僕と冬香さんの話を聞いていた。聞こえるのだろうかと言う、木陰と丘の上と言う離れた距離で。 横で早苗さんもじっと僕たちの話を聞いていた。 「私たちが、クローン・・・」 倫ちゃんがぼそっとつぶやいた。 「あたしが、流くんの妹さんの養子だったなんて・・・」 話すべきじゃなかった事も、たくさん話したと思う。 「だから、昔怪我した記憶があっても、体は綺麗だったんだ・・・」 み〜ちゃんがそう言った。 「・・・」 早苗さんは目を瞑っていた。感慨に耽っているのか、その内は何を考えているかは想像付かなかった。 「・・・」 冬香さんもそれっきり黙ってしまっている。せっかくのピクニックが重い雰囲気だ。 確かに、何も知らなかった彼女たちにとっては衝撃な事実ばかりだったろう・・・。 でも。 「僕はみんなが好きです!」 それだけは、未来永劫変わらなかった。 「僕は、好きなみんなを守る!この手で!」 そう叫んでいた。すると・・・ 「そ〜れが優柔不断って言うんですよっ?」 早苗さんが叱るような口調で、笑いながら、睨みながら僕に言った。 「へっ?」 僕は拍子抜けした。 「そぉうだよっ!結局誰なのっ!」 「あ、あの、私・・・」 倫ちゃんとみ〜ちゃんも丘から寄ってきた。 「あ、いや、その・・・」 3人に攻められて僕はたじたじだ。 冬香さんだけは、僕たちを囲った3人と僕を見ながら微笑んでいた。 「・・・まさか、冬香お姉ちゃん・・・?」 「えっ」 倫ちゃんが言うと冬香さんが驚いた。 「ええーっ」 「冬香っ?」 み〜ちゃんが驚くと、早苗さんも、ぶんっと音が唸るような勢いで首を冬香さんに向けた。 「えっ、いや、あの、いや、その、ええっと・・・あの・・・」 冬香さんは顔を真っ赤にして動揺していた。 「た、確かに、私はその、流さんの事は好きですけど、そんなつもりじゃ・・・」 と言いつつも顔は嘘をつかないのか顔は真っ赤だ。 「デートして私の帽子買ってくれたのにっ!?」 「今度流お兄ちゃんと2人きりで海に行く約束してたのにっ」 「流ちゃん、夏祭りに2人でお祭りに行くって言ってたわよね?」 倫ちゃん、み〜ちゃん、早苗さんが口々に言う。僕は恥ずかしくてしょうがなかった。 丘に残されたりかぼーは、ボールをきゅっと胸に持って、佇んでいた。 「あっ」 僕はそれに気付いて駆け出す。 「あっ」 倫ちゃんが驚いて道をあけてくれた。 僕は彼女のその側に立って、丘の下の木陰の彼女らを見た。 「・・・私たちの夢はあの時終わっていたのです」 冬香さんが、一人つぶやくように、そう彼女たちに言っていた。 「私たちは、いつもあなたを見ていますよ」 冬香さんがそう言うと、彼女らも優しそうな笑みで僕を見てくれた。 「りかぼー、遊ぼっか」 「えっ」 僕はりかぼーの手の中のボールを取ると、りかぼーに投げてみた。 「わっ」 りかぼーは落としそうになったけど、ちゃんと手に取った。僕は微笑んだ。 「よーくもやったねぇっ」 りかぼーも全力で投げ返してきた。 そうして、途中でみんな入ってきて、夕暮れまでボールを使った遊びでみんなで遊んでいた。 「今日は泊まっていく?」 「ううん、お母さん心配してるし」 「そう、気をつけてお帰りなさいね」 早苗さんが家に招いたが、りかぼーは断っていた。 「りかぼーっ、またねっ」 「ばいばいー」 倫ちゃんとみ〜ちゃんは挨拶をして門の中の家へ入っていった。 「今日はわざわざ遠いところまで来てくれて、ありがとうございました」 「ううん、楽しかったよ、冬香さん」 「変な話聞かせてしまって、ごめんなさいね」 「ぜんぜんっ。大切な話だったよっ」 りかぼーはジェスチャーで手を右左に振る。 「それではおやすみなさい」 冬香さんもそうお礼を言って頭を下げ、家の中に入っていった。 「流くんは戻らないの?」 「りかぼーを見送り」 「あ、あたしに気があんの〜?浮気?ダメだぞぅ」 辺りは夕焼けの赤から夕闇の青に変わり、りかぼーは頬を染めてるようだがわからなかった。 「これからも橘高の人たちを守らないといけないもんねっ」 「そうだね」 「ハーレム状態だね」 「ま、またそんな事を・・・」 「でも・・・流くんがあたしのお母さんのお兄さんで・・・ あたしが流くんの妹さんの養子だなんて・・・びっくりしたよ・・・」 「うん・・・」 「って言うことは何、あたしから見れば流くんはおじさんっ!?」 「えっ」 寂しそうな顔をした後、面白いものでも見つけたかのような顔をしてそう言った。 「まぁ、そう言う事になるのかな・・・でも僕まだ若いしなぁ・・・」 「力も戻ったんでしょ」 「うん」 「岩とか破壊できるの?」 「まぁ」 「もし私に危険が及んだら、その力で守ってよねっ」 「そう言う危険が、りかぼーに及ばないように祈ってるよ」 「またまた」 このぅ、と言いながら肘で横っ腹をつついてくる。くすぐったかった。 「それじゃぁもうそろそろ行くから」 「うん、またね」 「・・・」 どうしたの? そう言う前によってきて、 「またいつ会えるかわからないからっ」 そう言って僕の頬に唇を当ててきた。 「えへへっ」 「・・・複雑な感じだね」 「妹さん、って言うかお母さんの養子にキスされるのが?」 もう恥ずかしくて言葉は出なかった。 それからりかぼーは帰っていった。何度か振り返りながら。 僕も、その背中が見えなくなるまで見送っていた。 それから玄関に向かったら姉妹が待っていた。・・・と言うか、見ていた? 怒っている・・・?リンチに会うかと思っていたら、僕の顔をしばらく見てから、みんな微笑みに変わった。 「流ちゃん、おかえり」 「流、おかえりっ」 「流お兄ちゃん、おかえりなさい」 「おかえりなさい、流さん」 みんな、違う呼び方で僕を呼び、迎え入れてくれた。誰が言ってるのかすぐわかる。 しばらく家に入らずににこにこ見つめあったりしていた。 端からみたら変な光景かもしれないが、僕は心地よかった。 彼女らは、僕を好き、信頼し、必要としているのだと。 僕は僕を頼りにしてくれる人たちのために生きようと、そう思ったのだった。 ========================================================================================= はい、『遠足』と『真相』の続きです。 ちょっと強引に話を作った感じが否めないかも。 好きな人同士でにこにこお互いの顔を見るだけって、普通は変態かと思いますけど 実際そう言うことがあったなら凄く幸せでしょうね。私は経験ないけどさ。 まぁそんな感じですわ。 それではまた今度ーっですっ。)ノシ~~~ written in 2005.3