「いっしっし、今日はどんな攻撃をしてやろうかなっ・・・」 真琴は深夜の水瀬家で一人ほくそ笑んでいる。 今日も祐一にいたずらをしようとやってきたのだ。 ========================== け ろ ぴ ー の 夢 ========================== 「今まで祐一には悉くかわされてきたからー、ちょっと考えないと・・・」 祐一が困るもの・・・困るもの・・・ 祐一が大切にしてるもの・・・ 学校のカバン?教科書? でもそれだといつもと同じパターンだよね・・・ 人っ、そうだ、人っ いつも真琴が怒られてるんだから、祐一も怒られちゃえばいいんだっ 祐一を怒るとすれば、私の知ってる人で・・・ その人を怒らせなきゃいけないよね・・・ 秋子さん・・・? 怖っ! じゃぁ名雪・・・ 名雪に祐一が怒られる!これだっ! 名雪が大事にしてるもの・・・ いつも大事そうに抱えてるけろぴー・・・ これだぁっ! 名雪には悪いけど・・・これも復讐のためっ 真琴は閃いたように目を輝かせ手を叩いた。 ギィィィ・・・ 真琴は名雪の部屋のドアをそっと開いた。 名雪は気付かずに眠り続けている。 「私だったら幽霊が来たかと思ってびっくりして起きちゃうよ・・・」 と、言う事で、ちょっと失敬してけろぴーを貸してねーっ名雪っ 「ん〜っ・・・!」 しかし名雪はものすごい力でけろぴーを離そうとはしない。 「あーもうっ ちょっと借りるだけだからっ」 びりっ 何か聞こえた気がしたが、真琴はそのままけろぴーを無理やり奪い去っていく。 そして祐一の部屋のドアを開く・・・ ぎ・・・ぃぃぃ・・・・・・ ゆっくりとドアを開ける・・・今日はバレてない・・・ 何しろ深夜3時なのだ。眠いに決まってる。 真琴も眠いけど・・・ でも!祐一を驚かすのは楽しい! そっとけろぴーを祐一の隣に寝かせ、祐一の部屋を去る。 よっし!大成功っ! 真琴は喜んでジャンプしそうになったが、下には秋子さんも寝ているのだ。 そっと自分の部屋に帰還して、寝る事にした。 明日が楽しみだなぁーっ! ・・・・・・ ・・・ チュンチュン・・・ 冷える朝だがいい天気が水瀬家を迎える。 「う〜っ、朝かぁ・・・」 寒い・・・と祐一は布団の中をもぞもぞしていると・・・ ん?なんだかやけにふわふわしたものがある。 がばっと取り出してみると、 「どゎあああっ!何だコレ!!」 でかいカエルのバケモノが何故おれの布団の中に!! ・・・ってよく見てみたらけろぴーだ。 なんでおれがけろぴーと寝てる。 真琴だな! と思った矢先・・・ 「ああーーーーーっっっ!!」 と、名雪の部屋から声が聞こえてきた。 こんな朝に名雪が起きてることや、あのとぼけた名雪が朝から驚いたような声を挙げてる それ自体も驚きだが、様子を見に行くと理由はもっと驚きだった。 「けろぴー・・・」 名雪は哀しそうにけろぴーの腕を見ている。 腕? 「どうしたんだ、なゆ・・・」 「ゆう・・・ あーっ!」 「ん?どゎあっ!」 おれはけろぴーを抱きかかえていた。寝ぼけ眼だったのでおれもびっくり。 だが、よく見てみると・・・ けろぴーの右肩から右腕がなくなっていた・・・ 「えっ、ち、違う!おれじゃないぞ!今日起きたら知らない間におれがけろぴーと寝てたんだ!」 言ってみてかなりおかしい人みたいな発言に聞こえるが、事実だ。 と弁解していると、横で真琴が申し訳なさそうな顔で様子を見てきた。 「おい!お前だろ!あれの仕業は!」 おれの横にいる(と言うかおれが抱いている)けろぴーと、名雪が跪いて見ているけろぴーの腕を指した。 「あ・・・ぅ・・・」 ごめんとも言えないような泣きそうな顔で真琴は見ていた。 毎夜のいたずらは嬉しくないながらも慣れてしまったので、普段真琴の相手をしてやってないので 遊び相手程度にいたずらは受けていたのだが、今回ばかりはおれ以外にも被害が出たので叱らずにはいられない。 なのに、取り返しの付かないことをしてしまったと自覚しているらしく、 その姿におれは叫べなかった。 「どうしたんですか?」 秋子さんが様子を見に来た。 「あ・・・」 おれがドアから離れて秋子さんを名雪の部屋を覗かせた。 「まぁ・・・」 名雪はけろぴーの破れた腕を見てうっすら涙を浮かべていた。 「名雪、けろぴーは私が治してあげるから、着替えて朝ご飯を食べて学校に行きなさい」 「くすん・・・本当?」 「本当よ」 秋子さんは本当に優しそうな顔をしながら名雪に微笑みかけていた。 「うん・・・」 名雪がやっと立ち上がった。 「すみません、祐一さん、けろぴー、貸してくださいませんか?」 「あ、はい・・・」 おれは未だ抱いていたけろぴーを秋子さんに渡した。 「あ、秋子さん、今日、仕事はいいんですか?」 「今日は、非番です」 そう笑顔で応えて秋子さんはけろぴーを抱いて階段を降りていった。 横では、しゅんとなった真琴がじっと立ち尽くしていた。 最初は怒鳴ってやろうかと思ったが、あんまり可愛そうな様子なので叱る気が萎れてしまった。 見ると、真琴もちょっと目に涙を溜めている。 名雪が着替えて出てきた。 「名雪、ごめんなさい・・・」 真琴がぼそっと言った。 「うん・・・真琴は、悪くないよ」 でも真琴は心底申し訳なさそうにまだ立っていた。今回ばかりは反省してるようだ。 「真琴、おれにいたずらはいいけど、もうおれ以外に迷惑がかかるような、こんな事はするなよ」 ぽんぽんと真琴の頭を叩いてやる。 すると目に溜まっていた涙がぽろぽろと流れ落ちた。 「そうだよ、祐一が悪いんだから」 「おれかよっ!」 「そうだよ、祐一の寝相が悪いから」 そう名雪は苦笑いの冗談を言って取り繕っていた。 とりあえずリビングで朝食を取る。 名雪はいつもどおり、・・・のような、そうでもないような様子で淡々とイチゴジャムの食パンを食べている。 おれは普通にバターをつけて食パンを食べ、サラダや目玉焼きを平らげるとコーヒーを飲んでリビングを後にした。 遅れて名雪もついてくる。 「行ってらっしゃい」 秋子さんが笑顔で見送ってくれる。 「けろぴーは・・・?」 名雪が心配そうに訊いた。 「大丈夫よ」 相変わらず秋子さんは笑顔で答える。 「もう一人の我が子だものね」 「行ってきます」 玄関の外に出て靴を履き直す。 もう一人の我が子・・・か。 おれがこの町に来なくなってから、名雪はけろぴーを秋子さんに買ってもらったらしい。 7年間も一緒に就寝を共にしてきたのだ。 兄弟のような愛着が沸いてるのだろう。 話しかければ、笑顔のような、困ったような顔で反応はしてくれるが、 やっぱり気にしているみたいだった。 「どうしたの?」 学校の教室に着くと、真っ先に香里が訊いてきた。 相変わらず気が利くと言うか、敏感と言うか。 「ああ、ちょっとな・・・」 「なんだか、恋人失ったみたいな顔してるわよ、名雪」 「そんなこと、ないよ、おはよう香里」 そう答えはするが、やっぱり苦笑いだったりする名雪。 「ちょっと、何があったのか教えなさいよ相沢君」 「お前家で嫌らしい事したんじゃないだろうな」 北川が横槍を入れてくる。 「それはあんたの場合でしょ」 「ひでぇな美坂っ!おれそんな事しねぇよ!」 なんか上手い具合に話が逸れていったのでそのまま無視することにした。 今日の授業は体育とか作業的な授業はない。 国語、数学、物理、公民、英語、化学・・・ 教室でぼーっと先生の話を一方的に聞くだけだ。 それが幸か不幸か、名雪はぼーっとしている。 体育で陸上とかあったら、どうだっただろう。 いつも眠そうな名雪が、机を見たり、空を見たり、ノートを取ってるかと思ったらペンを落としたり。 「ほら」 「ありがと」 眠りはしないけどずっとぼーっとしてた。 後ろで香里と北川が目を合わせてるようだった。 お昼ご飯も学食に行かないというので、と言うか今日は秋子さんの弁当だ。 別々にするのは面倒くさいのでもちろんお揃い。 「相沢くんと水瀬さんお揃いの弁当だね!」 「仕方ないだろう、同じ家に住んで家主に飯作ってもらってるんだから」 学食に行くクラスの女子がそう言って出て行った。 「ほら、放課終わらないうちに食うぞ」 なんかぼーっとしている名雪。まだ気にしてるのだろうか。 午後の授業もノート取ったり先生の話聞いたり。何の変わりもなく時は過ぎて終わっていく。 普段はお腹いっぱいになって眠くなって寝るのだが、名雪があんまりしょんぼり・・・ してるようなないような様子だったので、何となく気になって眠れなかった。 「じゃーねー」 今日の授業は終わった。 特に連絡事項もなく、掃除当番は掃除に取り掛かって机を移動している。 机の中に入れたままの教科書が入ってる机を運ぶ当番は泣き寝入りだろう。 「今日も部活か?」 「今日は、休みだよ」 名雪に話しかけるとそう応えてきた。 けろぴーが心配だからってサボりじゃないだろうな。 と思ったが今日は木曜日か・・・確かに部活の定休日だ。なんかタイミングいいんだか悪いんだか・・・ 部活のない日は大体、イチゴサンデーを食べてストレス解消! と言う感じだったが、今日は寄り道せずにまっすぐ帰る。 帰り道を急ぐでもなく歩いていく。 「祐一さーん」 後ろの方で明るい声がした。 名雪と2人して振り返ってみると・・・ 「佐裕理さん、と舞」 「なに、そのとってつけた呼び方は」 チョップをかましてきた。 「だっていつもお前何も言わないし」 「あはは、おまけは佐裕理だよ」 「こんにちは」 名雪が挨拶をした。 「おれが居候してる家に住んでる、おれの従兄妹の名雪です」 「倉田 佐裕理ですっ と、ほら、舞」 「・・・川澄 舞」 「帰り道途中までご一緒しませんか?」 「はい」 名雪も了承した。 「なんだか名雪さん、元気ないですね・・・どうしたんですか?」 「あ、いえ、ちょっと・・・」 「お腹空いてるんですかっ?」 「まぁ、空いてると言えば空いてるけど、そうじゃないんだ佐裕理さん」 「そうですか・・・」 「これ、あげる・・・」 舞がいつの間に作ったのか、雪うさぎを差し出してきた。 「あ、舞!可愛いねそれっ」 「あ・・・」 「あ・・・」 「ほぇ?お2人ともどうしちゃったんですか?可愛いですよ?」 「あ、いや・・・」 「ありがとう、川澄さん」 名雪は困りと喜びを両方含んだような顔でそれを受け取った。 「佐裕理たちはこっちです」 「さようなら、倉田さん」 「また会いましょうっ」 おれも佐裕理さんに分かれを告げると、佐裕理さんは小さく手を振って帰っていった。 「・・・帰ろう」 「うん」 帰ってからは何をするでもなく、宿題やったりラジオ聴きながら雑誌読んだり。 夕食の時間になるとみんなリビングに集まってくる。 「いただきます」 「お母さん、けろぴーは?」 やっぱり名雪は心配してるみたいだ。即行で訊いた。 「もうすぐ治るわ、もうちょっと待っててね」 「うん・・・」 真琴はそれまで普通の様子だったが、その話を聞いてしゅんとした。 「おっ、真琴、今日は食欲ないのか?どれ、おれが頂こうかな」 「あっ、ダメーーーっ!!」 そう言ってエビフライを瞬速で口に咥える真琴。 それを見た名雪と秋子さんが笑った。 こいつが元気じゃないと水瀬家の夕食の明かりが薄くなるじゃないか。 下でぴろも、うにゃぁと一声鳴いてミルクを飲んでいた。 ご飯が食べ終わってからはテレビを見たり風呂に入ったり自分の部屋に入ったり、 それぞれ思い思いの時間を過ごしている。 夜12時くらいになったのでおれも寝ることにする。 コン コン ん?こんな時間に誰だ? 「はーい」 だが誰も入ってこない。おれの聞き違いか? ドアを開けると名雪がぼーっと立っていた。 「名雪、どうした、こんな時間まで起きてるなんて珍しいな」 「・・・ない・・・」 「え?なんだって?」 「眠れない・・・」 けろぴーがいないから眠れないと名雪は言うのだ。 そうだ、急にけろぴーがいなくなったから違和感以上に寂しい思いがするのだろう。 おれに言わせれば、ホテルの枕とかベッドは寝にくいと言ったところだ。 「そんなこと言われてもな・・・」 「祐一、一緒に寝よう」 馬鹿ちんかお前は。 なんでこの年になってまで従兄妹の同い年の女の子と一緒に寝ないかんのだ。 「なっ」 だが名雪は勝手におれのそでをぐいぐい引っ張り出した。 「おっ、おいおい、ちょっと待・・・ぶっ!」 ガコンッ! 名雪の部屋のドアに激しくぶつかった。 「あ  ッタ〜〜〜・・・」 成り行きで名雪の部屋の中を見ていると・・・ ずるっ 「なんでお前がここで寝てるんだ」 「昨日のお詫びっ」 真琴が名雪のベッドで寝る準備をしている。 「お前ね・・・」 名雪は問答無用でそのままおれをベッドに連れて行った。 電気を消すとそのまま布団を被る。 「おやすみなさい」 名雪はなんだか笑顔で眠りにつこうとしている。 「今日は早く眠れそうだよ・・・」 「っておれは了承してないぞ!つかお前今日早く寝れるなら、なんで今起きてんだ!  つかおれ要らないだろ!ってツッコミどころ多すぎだろっ!」 そう言っておれは名雪のベッドから抜け出ることにする。 って名雪の手がしっかり俺の腕を握っている! 「こらっ お前の手は手錠かっ 離せっ 脈が止まるだろっ」 「祐一うるさいっ 名雪が眠れないでしょーっ!」 真琴が叫ぶが、なんと名雪はもうすでに眠っている! 「くそーっ!お前寝れるじゃないかっ!」 ぐりぐり・・・ 名雪のほっぺをつねってやるが、反応がない。 「あーっ、祐一が名雪にいたずらしてるっ」 「叫ぶなっ、名雪が起きるだろっ つかいつもいたずらしてるのはお前だろっ」 名雪を挟んでうるさいおれと真琴だったが、名雪は嬉しそうに眠っていた。 チュンチュン・・・ 昨日と同じような天気で朝が来た。 が、いつもの朝とは少し違っていた。 「結局ここで寝てしまった・・・どうしよう」 起きる場所は名雪のベッド。おれよく落ちなかったなと思う。外側だし。 名雪と真琴はまだすやすや寝ている。 すると秋子さんが上がってきた。 コンコン 「名雪、入るわよ?」 ガチャっ 名雪と寝てるところを秋子さんに見られてしまいました。 「おはようございます、祐一さん」 「あ、おはようございます・・・」 なんか、いつものこと みたいに流されたと言うか、普通に朝の挨拶です。 泣いて良いですか。 「名雪、朝よ、起きなさい、真琴も」 2人はう〜んと唸りながら目覚める。 「おはよぅ・・・」 真琴が起きた。続いて名雪もなんとか起きる。 「おはようお母さん・・・」 「けろぴー、治ったわよ」 その言葉で名雪はぱちっと目が覚めたらしい。 さきほどから秋子さんが抱いていたけろぴーを名雪に見せた。 傷口は跡形もなく消え、もういつものけろぴーだった。 「ありがとうお母さん!」 名雪は大喜びだ。普通の人が普通に喜ぶくらいのリアクションが、名雪にとっては大喜び。 真琴もほっとしたような顔だった。 「真琴、もういたずらしちゃだめよ」 「はい・・・」 と思ったらしゅんとしていた。でも良かった。 いつもの朝は名雪を起こしたり連れてくのに大変だったが、今日は逆に引っ張られるほど元気で上機嫌だ。 いつもはぼーっとしてたり、昨日は落ち込んでたり、今日は朝からハイテンションだったり。 「遅いよ祐一っ」 名雪に言われたらおしまいだ・・・くそっ! なんだかおれも朝から燃えてしまった。 朝食を食べながら見たニュース番組最後の占いで、山羊座の運勢は1位の大吉だった。 今日は、いいことある気がするよっ ね、けろぴー ―――――――― ===================================================================================== やべー一日で書き上げちゃったよ 友達と遊びに行った時にUFOキャッチャーでGETSしたカエルのぬいぐるみ私持ってるんですが それ抱き枕代わりで一緒に寝たら、夢見てけろぴー(と名付けている)が破れた夢です 起きたらけろぴーは破れてませんでしたが、うちが風邪引いてましたorz けろぴー抱いた分布団が盛り上がるので隙間風が・・・(窓は開けてないけど) で、思いついたストーリーです 小説なんて久々に書いた タイピング始めて考えながら、30分で出来ちゃいました 自分ながらに早ぇーと思います つーかいつの間にか長くなってるー?Σ(ι 名雪さんフェチって事で勘弁して下さいw では、11月更新記念って事でw written in 2005.10.30