月姫


2005年冬にやった、まだ同人だった時代のTypeMoonの作品。
企業化して出したMeltyBloodと言う格闘ゲームの元ネタのストーリーが知りたい
と言う事でやった。


・紹介
幼少期の頃に死ぬほどの事件をきっかけに、存在の「死に易い線」を見る事ができるようになった遠野志貴。
それから8年後、分かれた妹から、戻ってくるようにとの連絡を受ける。
そこに待つのは2人の使用人・・・。
学校に行けば、そこには陽気な女先輩・・・。
最近夜の街に起こる"吸血鬼事件"で彼は、吸血鬼を退治する白い吸血鬼と出会う。
その時、遠野志貴の毎日の生活が変わる。

TYPEMOONと言う、同人サークルが出していた作品。
同人なのにストーリーが深くて人気が出すぎて企業化したというとんでもない成功屋。
吸血鬼と言う、ありきたりな空想物語だが、吸血鬼がどんなものなのかを、空想を元に
しっかりした設定が、同人の作品だったのに消費者を驚かせた。
紹介は引き込むようなものはないが、ストーリーは引き込まれる。
長い説明もしっかりしていて進行具合もゆっくり。以下キャラレビュー。ネタバレ要注意です!



アルクェイド
白い姫。純粋な吸血鬼。一目惚れして一度殺してしまう事から知り合う。
無駄なことはしない時はほとんど眠っていた。
吸血鬼として能力は高いが、普段は普通の人間と変わらない笑顔で接してくる。

無邪気な笑顔がそれを吸血鬼と感じさせない。
根っからの吸血一族で、だが血を吸わない一族でもあった。
血を吸う吸血鬼を滅ぼすべく生まれ、それ以外はほとんど城の地下で眠っていたという。
だから面白いことも何も知らない、その笑顔は真に純粋で無邪気であった。
それだけに、吸血鬼の歴史に詳しかったり戦闘能力が高いのに、それ以外の事は何も知らずに笑顔で聞いてきたり拗ねたりするところには面白いギャップがあっただろう。
志貴が一度殺してしまったせいで弱体化したアルクに責任を感じて助けていこうと言う過程で、互いと楽しもうという感情が芽生えた。
やる事が済んだら、きっと楽しいことが待っているだろう、そんな終わり方が清々しかった。
純粋に人気がある。



遠野秋葉
遠野家の当主となった主人公の妹。
兄に対する思いは非常に強いのにいつもはツンツンしている。
素直でないお嬢様。

私は実は先に翡翠や琥珀の方をクリアしちゃったんでさっちんを助けられなかったから
こっちなら助けられるかなと思ってたけど残念に・・・
「後悔しちゃいけないって思うんだ」って言う前向きな思いに、少し心打たれた。
私もそう思っているから。
そしていきなりキレだす秋葉は面白いw
と言うか有彦が面白いw 異性の有彦に嫉妬してる秋葉が面白いw
よっぽど兄さん狂なんですね。
ストーリーが進んで、志貴が人を殺した時に思うこと
「死は、それほどに痛い」と言うのが、命と言うものが
どんなに大切なのかを伝えたがってるような、そんな気がした。
血の繋がりはなくても、おれはお前の兄貴だって言うのには
心の繋がりを感じさせられた。
秋葉が自分を元気付けようとする志貴に対する想いが一途だな
と思った。それだけに、自分が自分でなくなったら殺してください
って言うのにはやりきれない思いだった。
自分が自分でなくなっても私を愛してくださいとかの方がまだ救いがあったのに。
もう一つのエンドは救いがない。
ストーリーの中くらいハッピーエンドでもいいのに・・・
思いの残る終わり方だった。



シエル
学校で知り合う先輩。
みんなが当たり前のように知っているのにその前のことは誰も知らない。
当たり前のように笑顔で接し、お世話好きな先輩である。

最初、校庭で椅子を直しているところを見るところから知り合った。何気ない笑顔が純粋を感じさせる先輩。
会ったことがないような気がするのにずっと前から知り合いでもあったような錯覚。
一緒に茶道部でお茶を飲んだり・・・。
この街に居る吸血鬼騒動で間違ってネロを倒した時、先輩とそっくりな黒服を身に纏った人を見る。
だがあれはシエル先輩だったのだ。
そして真の敵・ロアを見つけた時はシエル先輩はずたずたにやられていたのに自然回復する。
死ねない体。ロアの一代前の体。ロアの娘。真徒から生まれた永遠に輪廻転生する体の死徒、
そしてさらにそこから生まれた死ねない体。
そこでシエル先輩の色々を聞く。シエル先輩を知らないのに知っていたのは、洗脳・錯覚させる能力があったからだと。
でもそれまでの何気ない生活はとても楽しかった。だから、生きているだけで価値があるのだと。
死は易く生は難し。だが彼女にとって、生は易く死は難しだったのだ。
人間として死にたかった彼女の願いは叶えられることはなかった。
それなら無限に楽しんでいけばいいだけだ。そうポジティブ思考に変えて。
でも終わり方はなんか・・・志貴の優柔不断のせいか、不可抗力か、なんだーって感じだったw



翡翠
遠野志貴専用の使用人。8年前から遠野家で働き続けてきた。
普段は大人しく、必要最低限の会話しかしない。
だがたまに出す照れた感情は面白い。

冷たそうでそうでない翡翠。どうにかして笑わせてやりたいと思う志貴の感情とは共感できるw
家主の遠野秋葉ではなく、自分の主人の志貴のために、色々尽くしてくれる。
夜中の出歩きを秘密にしてくれたり、風邪の時には常に看病してくれたり・・・。
そんな翡翠に対していつしか志貴は翡翠に感謝していくようになり好きになる。
そんな志貴の気持ちにも素直に受け取る翡翠が微笑ましい。
最後は秋葉に危ない目に合わせたくないからと学校に赴くが、秋葉も琥珀も・・・。
グッドエンドは救いがあっていいけど、トゥルーエンドも好き。
姉さんの分まで頑張るよ って言う白いリボンが飛んでいくあの最後のシーンは必見。



琥珀
遠野秋葉用の使用人で、いつも竹箒で庭の掃除をしている元気なメイド。
金色の目に割烹着(かっぽうぎ)と言う、和服にメイドエプロンのようなものを着た格好をしている。
屈託ない笑顔が象徴的で、人見知りのしない対応をしてくれる。

普段は明るい元気な対応をしてくれるお姉さん。そんな普段が楽しい。
だが虚ろな目になったり指を切っても痛みを感じなかったり、ちょっとおかしいなと思った。
けどそれは過去に、陵辱されてて、感情を捨てるしかなかったから。
翡翠が翡翠で居られなくなった時、妹を励まそうと元気になっていった琥珀さんは、翡翠となったのだ。
それを知った志貴が、「もう笑わなくていいんだ」って抱きしめるところは結構感情移入した。
でも、琥珀は遠野家を許せずに、遠野家の壊滅を企んだ。自分が苦しむ理由を滅ぼすために。
志貴を欺いたり利用したり、秋葉と殺し合わせたり・・・。
でももう誰も悪かったわけじゃない。琥珀は悪くない。自分が生きるには、こうするしかなかったのだ。
女の騙しは許してやるべきだとも言うじゃないか。
だから、今元気な琥珀も、元に戻った琥珀も、どんな琥珀も私は好きでした。
悪女として人気は微妙だけど、私は元気な琥珀さんがこのゲーム内で一番好きです。




・シナリオ
吸血鬼と言う伝奇モノ。ありきたりな設定だが、内容を深く描写し、
矛盾や謎を感じさせない作りが、同人として妥協していない。
死の線が見える や、遠野家の過去、吸血鬼との戦いなどが魅力を膨らませている。
ゲームボリュームも然ることながら、泣きや感動とは違った何かがある。
トゥルーエンドは現実的?っぽいが、グッドエンドがあるのが救いだ。
また、どのルートを通っても結果的には似たような終わり方になる。納得しやすくていい。


・CG
CGって言うか・・・まぁシナリオがいいので、みたいな妥協。
同人ぽいが、TYPEMOONの絵だ ってわかる独特性がある。
境界線がはっきりしているのが特徴。
ウマイヘタは別としてイベント絵は結構ある。えち多いけど。


・音楽
まぁこれも同人って言うか・・・音楽作るのはムズイから気持ちはわかる。
あえて無音にし、時計や心臓の音で演出しているのもいい。


・システム
ボイスなしホイール対応なし。だがバックログは可能だし、まぁ必要なものは一通り揃っている。
シナリオで精一杯だったのか、特筆すべき点はなし。
一度クリアすると選択肢が出現など長期に渡って遊べる。


・総評
どうも、『同人』と言う意識が自分の中から離れてくれなくて、公平な評価がしにくい・・・。
シナリオはよくできているが、ゲームの重心とも言える肝心の絵が・・・。
まぁキャラとかは好きだからいいけど。
とりあえず、見るべきはシナリオ。それだけで人気の高い理由ともなるだろう。
終わりと始まりが同じ感じなのは結構いいと思った。
ちゃんと締めてるって感じがして。
感動や泣きとはまた違う。どんなシナリオか知りたい人は、やってみても損はないはずです。つかやるべきです。
私はなんか捻くれてるのかなんなのか、それほどでも・・・って感じでした。



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