『また会えるその日まで』 未夢の最高の誕生日を終えた翌日の朝。 西園寺家は不思議な雰囲気に見舞われた。 今日は、ルゥたちと分かれる当日である。 今日は学校の終了式。朝早く起き支度をする。 ワンニャーも何だか色々と焦っている。さすがに緊張しているようだ。 「なるべく早く帰ってくるからな。どんなに遅くても昼までには帰ってくるから。」 「わかりました。行ってらっしゃいませ。」 未夢と彷徨はルゥやワンニャー、ペポに何度も振り返りながら西園寺を後にした。 「今日・・・なんだよね・・・。」 「ああ・・・。」 会話もそれだけで無言で学校に着く。 正門までいくとちょうど綾とななみにあった。 「おっはよ〜新婚さん!」 いきなりからかってくるななみ。 「ち、ちょっとっ・・・。」 先制攻撃に怖気づいて照れる未夢。 でもその照れは一瞬で、何だかすぐ悲しそうな顔に戻った。 「どうしたの?未夢ちゃん?」 「昨日なんかあったの〜?」 「えっ、そんなことないよ!そう言えば昨日はありがとうね!」 「うん。でもじゃあ何でさっき悲しそうな顔したの?」 「それは・・・。」 綾とななみには最後の最後までルゥたちの事を教えなかった。 これで良かったんだろうか。何だか騙し通すような事をして罪悪感を感じた。 彷徨の顔を見ると、こくっと頷いた。 「あ〜っ!もしかしてもうすぐ転校して西園寺くんと離れ離れになるからでしょ〜っ!?」 ななみがそう言うと、未夢が答えた。 「えっ!ちょっ!まあ・・・それもあるけど・・・そうじゃないの!!」 未夢はななみたちに事の真相を告白することにした。 「実は、うち、じゃなくて西園寺に居候してる親戚のお兄さんと、あと私に弟が居るって 言ったよね。 実はウソで、二人とも宇宙から漂流してやってきたの・・・。」 「えっ・・・!?」 言った方も聞かされた方も、その中のメンバーにしか聞こえないような声で言った。 「それで、今日帰るの・・・。」 「帰るって・・・?」 綾が聞いた。 「母星に帰るの・・・救助隊が今日到着するの・・・。」 「・・・。」 綾もななみも事の真相に驚きを隠せない。 「ごめんね今まで隠してて。大騒ぎになっちゃうと思ったから・・・。」 「ううん。何か秘密を打ち明けさせちゃってこっちの方こそごめんね。 話してくれてありがとう。」 「そうだったんだ・・・あの親戚のお兄さんがねえ・・・確かにそんな雰囲気が・・・ でも大丈夫!あたしたち絶対誰にも言わないから!」 「でも、ルゥくんをもう演劇に出せないかと思うとちょっと寂しいなあ。」 綾は冗談っぽく言ってみた。 「とりあえず、学校の中に入ろう?」 未夢がみんなにそう言うと、クリスが後ろからやってきた。 「まあ皆さんおはようございます。こんなところでどうなさったんですか?」 花小町になら話してもいいだろう。そう思った彷徨はとりあえず学校へ入る事に。 「お〜っす彷徨!」 「未夢っち!今日も一段と綺麗だねぇ!」 教室に入ると威勢のいい三太のかけごえ。 と、望の未夢だけに対する挨拶。 そう言えば望くんの事忘れてた。昨日プレゼント貰わなかったっけ。 でもいつもバラ貰ってるからそれだけでいいんだけどね。プレゼントより気持ちだよ。 いつもありがとうね望くん。 未夢は心の中で望にお礼を言った。 「おはよう、望くん。」 「おお、未夢っちの方から声をかけてくれるなんて、僕は何て幸せものなんだ〜!」 「光ヶ丘くんなんかほっといて話を続けようか。」 ななみが強引に話を続けようとした。 「ひどいよななみちゃん!」 望が嘆きながら話に加わってきた。 彷徨がクリスと三太と望に話しだす。 「おれの家に居る親戚のお兄さんと未夢の弟と言っていたルゥ。 実は二人とも宇宙人なんだ。」 それから今までの事を詳しく彷徨は話した。それに添えるように未夢も付け加えたりする。 「そうだったんですの・・・。」 「そうだったんだ・・・。」 「そうだったのかい・・・。」 聞いた三人は同じように驚いて納得。 「って事は、未夢ちゃんと彷徨くんは二人きりの時もあったってことですのね? ふふっ・・・いつの間にら告白してたりして二人は両想いでそんなのイヤァーーー!!!」 「未夢ちゃんと西園寺くん、もう両想いだよ?」 綾がさらっと暴露する。 「ちょ、小西!!」 彷徨がいつになく慌てた様子。するとクリスが・・・。 「えっ!!!彷徨くん!そうなんですの!?本当にそうなんですのー!?」 「・・・ああ・・・。」 「そんな・・・そんな事ってぇ〜〜〜!!! でも、いつかはこうなる事はわかっていたんですの・・・ 未夢ちゃんも彷徨くんも両想いなのに本人たちが気付いてないだけで・・・ でも、デモォ〜〜!!!」 クリスが泣きながら暴れだすところで水野先生がやってきた。 「はいはい。今日は終了式なんですから、いくら後で直すといっても 暴れたらだめよ花小町さん!」 「はい、すみませんでした。」 素直に乙女のように戻るクリス。 「・・・これでよかったんだよ西園寺くん。 いつかはこうなる事だったんだから。」 ななみが彷徨にそう告げた。 「ああ・・・っていつかこうなるって、どう言うことだよっ。」 ふふっと笑いながらななみは自分の席に行く。 皆自分の席へ着いていくと終了式の説明が始まり、 そして終了式へ。 だが、未夢だけはこの学校の3年生になる事ができない。 未夢は帰ってくる両親と一緒にかつての中学へ戻るのだ。 だがこっちで得たものは今まで以上に大きいものばかりだった。 それは言い切れないほどたくさんで。 終了式の間、色んな思いが駆け巡った。 そして終了式は終わった。 「ねぇ、今からちょこっとだけ西園寺くんの家に行っていい?」 綾がそう言い出した。 「あっ!それじゃー私は先に帰って片付けを・・・。」 未夢が走りだそうとした時、彷徨が未夢の肩をつかんで言った。 「その必要はないって。もう皆にばらしたんだから。それに家はワンニャーが片付けてる だろ。」 ・・・そうだった。 「ワンニャーってなんですか?」 クリスはすっかり立ち直ったようだ。 「あの親戚のお兄さんは、変身した姿で、本当はワンニャーって言うんだよ。 犬みたいな猫みたいなぬいぐるみだって誤魔化してたあれだよ。」 未夢はやさしく答えた。 「未夢ちゃん、今までごめんなさい・・・わたくし、未夢ちゃんに嫉妬していました・・・。」 立ち直ったかと思いきや突然泣き出してしまうクリス。 未夢はクリスをなだめた。 「・・・未夢、花小町を任せた。」 「お前も結構酷いやつだよな〜。」 「何がだよ。」 三太がそう言うと、彷徨は不機嫌そうに言い返した。 「だってあれだけお前の事想ってくれていたのにきっぱり切り捨てちゃうんだもんな〜。」 確かに、そう言われれば自分のした事は酷かったかもしれない。 だが、相手の気持ちと自分の気持ちが一致しているとは限らない。 彷徨は無言でその話を流してしまった。 だが、そう思うと未夢と自分の想いが本当に一致しているのか改めて疑問に思う。 彷徨は思わず未夢の方に振り返った。 「でも、逆にある意味凄い光月さんの事が好きなんだってわかるよな〜彷徨。」 「・・・殴るぞお前。」 大人数で西園寺についた一同。 「私、先に帰ってワンニャーに説明してくるね。」 未夢は駆け足で玄関に入っていった。 もうまるで自分の家のように。 「ワンニャー居るーっ!?」 「はーい、未夢さん早かったんですね。彷徨さんは?」 「後で来るよ、後、綾ちゃんたちも来てるから。」 「えっ!それじゃあ変身ですかっ!子供か奥さんか青年かどれがいいでしょうかっ!?」 「大丈夫だよ。もう皆には本当のワンニャーやルゥくんたちの事教えたから。」 「えっ、どう言うことですかっ・・・?」 未夢はワンニャーに一部始終を簡単に教えた。 「そうだったんですか・・・。」 「ちょっと待っててね。」 玄関から未夢が出てきて皆を案内する。 皆を玄関に入れるとそこには不思議な動物が立っていて、側には空中遊泳している赤ん坊と 生きたぬいぐるみが居た。 「皆さん、改めまして初めまして。シッターペットの、ワンニャーと申します。 よろしくお願いします。しかしながら未夢さんたちからお聞きでしょうが、 わたしたちはもうすぐ帰ります・・・。こちらはルゥちゃまと、ペポです。」 「だーあっ!」 「ペポ〜っ!」 礼儀正しい不思議な生き物と、可愛いぬいぐるみと、空飛ぶ赤ちゃん。 皆は改めて驚いた。 「へぇ〜未夢んちにこんな可愛い動物が居たんだ〜っ。」 「ちょ、ちょっと恥ずかしいですよ〜っ。」 「ふわふわしてて気持ちいい〜♪」 ななみがワンニャーに抱きついている。 「ルゥくん、ちょっと大きくなったんじゃないっ?さすが赤ちゃんは成長が早いよね!」 「きゃっきゃっ♪」 綾ちゃんはルゥを抱いてあやしている。 「へえ〜おもしろいぬいぐるみだな〜おとなしくしろよ〜っ。ギャッ!」 「バリバリバリ☆」 三太がペポを捕まえるとペポは尻尾から電気を発した。 「この動物、最初に未夢ちゃんの歓迎会やった時にいらした方ですね・・・。」 クリスがそう言うと未夢が答える。 「そうだよ〜。あの時はワンニャーに悪いことしましたなあ〜。 座布団だよってのしかかったら気絶しちゃうんだもん!」 「未夢が重かったんだよな。」 「彷徨うるさい!!」 そう言って未夢は彷徨の体をドンと押す。 「なんかさっきからオカメちゃんがワンニャーの頭の上を回ってるよ。」 見ると確かにオカメちゃんが興奮気味でワンニャーの上を回っている。 「フンとか我慢できないとか・・・。」 「未夢、下品な事言うな。」 「もう〜!彷徨本当やかましい!!」 「あっ!そうだ、ルゥくん、ペポ、ちょっとワンニャーの上に乗って〜。」 「えっ、何ですかっ・・・?」 目の回ったワンニャーを立たせ、ななみはワンニャーの頭の上にルゥくん、ペポを乗せる。 「最後にオカメちゃん乗って〜ほら〜。」 「プルッ!」 オカメちゃんは返事をすると共にペポの上に乗る。 すると綾が自然に仕切りだす。 「はいっ!そこでみんなばんざいして〜!」 「こうですか?」 「あ〜い!」 「ぺぽぉ〜!」 「ぷるっ!」 「おお〜!」 みんなが驚いている。 ワンニャーたちのその様子は何だか見栄えがいい、と言うか、可愛い! 「いいなあ〜未夢こんなペットがいて〜♪」 「あっ、ななみさんちょっと〜っ。」 ワンニャーは抱かれて恥ずかしがっている。 「それより、さすがに頭が重いです・・・。」 「あっ、ごめんごめ〜ん。」 みんながワンニャーの上に乗っている可愛い子たちを抱いていく。 そうこう話は弾み、時間はいつしか昼へ。 三太がお腹空いたなと言うとワンニャーが食べて行ってくれと言う。 西園寺の食費、マジで大丈夫なんだろうか。 でも最後の最後だ。彷徨も太っ腹を出して、ワンニャーたちの見送り会みたいな感じで 盛り上がった。 ワンニャーの変身ショーやルゥの超能力ショー、ペポの特殊能力。 三太の手品や綾の演劇、ななみの一発芸、クリスのキレや望のバラ奥義、 彷徨は手料理を作ったし、未夢もこのほぼ一年で覚えた家事全般を披露した。 そして時間は夕刻に近づいていく。 「それじゃあホントのお分かれだね・・・。」 三太がワンニャーに言う。 「ホントの宇宙人に会えたなんて感激だよ!」 「ルゥくんも、向こうで元気でやっていってね。」 綾が名残惜しそうにルゥをワンニャーに抱かせる。 「ペポもたくさん食べて栄養つけるんだよぉ〜。」 ななみがペポをなでて言った。 「ワンニャーさん、今まで本当に色々とありがとうございました・・・。」 「ルゥくん、またオカメちゃんと遊びにきてくれよ〜!」 クリスや望も言う。 「皆さん・・・本当にありがとうございましたっ・・・。」 「それじゃあ、さようなら〜!さようなら〜!」 三太を始め、その衆は大きく手を振って西園寺を去っていった。 そしていよいよと言う時、星矢がやってきた。 「星矢くんっ!?」 「やぁ未夢ちゃん。彷徨くんも。ワンニャーとルゥくんペポ、いよいよだね。」 「・・・どうしたんだ・・・?何かあったのか?」 「ううん。ルゥくんの救助船は一時、時空のひずみに飲み込まれそうになったけど、 どうにか脱出して今地球に向かっている。もう安全、確定だよ。」 「よかった・・・。」 「それで、より正しい情報を僕の宇宙船で調べれないかと思ってやってきたんだ。 ルゥくんのUFO、半分壊れかかってて受信がまともにできないかもしれないから。」 「星矢さん・・・。」 「だからっ、今から通信してみるよ、僕の宇宙船で。」 「星矢、ありがとな。」 彷徨がお礼を言うと星矢は目配せをして任せてよと言わんばかりの笑顔。 そして星矢が通信をすると、口を開いた。 「・・・今18時だから、後一時間後の19時に救助船がこの西園寺の真上に現れる。」 「・・・そうか。」 「その時、他人に見られるとまずいから、その間バーチャル映像で 他人がこの西園寺に入れないようにしておくよ。」 「星矢くん・・・。」 「星矢さん、最後の最後まで重ね重ねありがとうございます。」 ワンニャーは深く頭を下げ腰を曲げてお礼を言った。 「何言ってるの、昔の罪滅ぼしだよ。」 そう言うと星矢は苦笑いした。 すると何かが西園寺に近づいてくる。 「ルゥーぅー!」 ももかちゃんの声だ! 「ももかちゃん!?」 未夢が星矢の宇宙船から飛び出してももかちゃんを見ると、 猛スピードで三輪車をこいできたももかが居た。 「クリスおねーたんに聞いて飛んできたの!ルゥ!今日帰っちゃうのね!? いきなり帰っちゃうなんて嫌ー!」 ワンニャーが抱いていたルゥを抱き寄せ、ももかは泣き叫んだ。 いくら普段強がってませていてもさすがそこは幼稚園児。 「ももかちゃん・・・。」 星矢はももかの頭をなでながらなだめる。 「大丈夫さ。ルゥくんはきっとまた地球に来る・・・いや、帰ってくるよ。」 「星矢おにーたん・・・。」 「じゃあ、僕は先に発つね。バイバイ、ルゥくん。 彷徨くん、未夢ちゃんを頼んだよ。未夢ちゃんも笑顔でルゥくんを見送って・・・。 それじゃ!」 星矢の宇宙船は勢いよく飛び立っていった。 涙の止まらないももかは泣くばかり。 彷徨がももかに言う。 「・・・とりあえずももかちゃん、おうちに帰りなよ。」 「嫌!ルゥと一緒にオット星まで行くんだもん!」 「ももかちゃん・・・。」 未夢はその様子を見て納得する。できれば自分がオット星まで行きたいくらいだ。 「ももかさん、わたしたちはちょっとだけ田舎に帰るだけですから、また会えますよ。」 「ほんとっ・・・?」 ぐしっと涙をぬぐってワンニャーを見つめるももか。 「地球より田舎だとは思えないけどな。」 彷徨が言った。 未夢とワンニャーがあははと笑うとルゥも無邪気に笑う。 「・・・ほんっとっ、ルゥはわかってないんだから・・・。 あたちがこんなに寂しがってるのに。ねぇ?ルゥ・・・。」 ももかは少し落ち着いたようだ。ルゥをももかに抱かせながら、 ももかを家まで送る未夢たち。 非常にゆっくり歩くそのスペースは、とても名残惜しい事を表している。 「はい、着いたよ、ももかちゃん。」 家まで着くと、持っていた三輪車を下ろして言う彷徨。 だがももかはルゥを抱いたまま黙っている。 どうにか説得する未夢とワンニャー。ワンニャーがルゥを抱きかかえると ルゥが泣き叫びだした。 「もーも!もーも〜!うぇ〜ん!」 ももかはその様子を見て再び涙が溢れ出しそうになる。だがこう言った。 「ルゥ!またね!バイバイ!」 悲しさと淋しさを吹き飛ばすように叫んで笑顔でルゥに手を振るももか。 ルゥも何かを悟ったのか笑顔でももかに手を振る。小さなその手を精一杯振る。 その後、ルゥたちはももか邸を後にする。 最後の散歩となる帰り道。話したいけど誰もが沈黙。 西園寺の階段下まで着くと、足が止まる一行。 「・・・。」 今更ながら、分かれたくない。 どうしようもない板ばさみに、発狂しそうになる。 未夢は知らず知らずのうちに震えていた。 だが、その様子を見た彷徨がぎゅっと未夢の手を力強く握り締め、 まるで勇気を分け与えるようにした。 「大丈夫だ。また絶対会えるさ。」 「そうですよ!会えない訳がありません〜っ!」 ハイテンションになっちゃったワンニャーを見て未夢は少し笑顔になり、こう言った。 「あっは・・・ワンニャーってばいつもそうなんだから・・・。」 片手の指で少しの涙をぬぐい、未夢は言う。 そして4人で階段を上り始めた。 家に入り、玄関の電気を付ける。 辺りが真っ暗だったため、いつもにも増して明るく感じた。 彷徨もワンニャーも足が止まってしまった。 「ほらっ、家の中、入ろ?最後なんだよ。」 「ん?あ、ああ・・・。」 「は、はい・・・。」 未夢はそれとなく普通に家に上がる。 最後の晩餐。正にそんな感じだ。 しかし、特に豪勢と言う訳でもない。最後だから普通の料理。 夕飯は、至ってごく普通の和食の、米、味噌汁などであった。 不思議な感じだ。これからお分れだって言うのに。 普通に話せる。 夕飯を食べ終わった彼らは身支度を整え、外で待機することにした。 「とうとう、とうとう最後だよ・・・ペポ、ルゥくん、ワンニャー。」 「はい・・・。」 「あーい☆だーぁ☆」 「ルゥのやつ、ほんとにわかってないんだからな・・・。」 「ペポー!」 すると西園寺の上空からまばゆいばかりの光が辺りを照らし、大きな宇宙船が現れた。 宇宙船から下に光が伸びる。 ペポ、ルゥ、ワンニャーはその光の元へ行った。 「未夢さん、彷徨さん。今まで本当にありがとうございました。本当に・・・。さようなら・・・。」 「ペポ・・・!ワンニャーっ・・・!・・・ルゥ・・・くんっ・・・。」 泣かないって決めてたのに。 彷徨がひじで未夢の体をぐいぐい押す。 「バイバイ!ペポ!ワンニャー!ルゥくん!!またね!!」 「あーい☆マンマー☆パンパーっ☆ 「ワンニャー!ルゥのこと、しっかり頼んだぞーーーっ!」 「ペポー☆」 ワンニャーは光の中で何か言っている。未夢たちの声がもう届いていないのだろうか。 それでも解ったようにワンニャーは微笑み、そして光の中へと消えていった。 そして、宇宙船は夜の空、闇の彼方へと姿を消していったのである。 何も残らないはずの夜空から。一つの何かが舞い降りてきた。 それは、 『家族』という名の『愛情』だったのかもしれない。 ===================================================================== written in 2003.10.10