『未夢の重病』 あの日以来、未夢は何となく左腕の調子がおかしかった。 毎夜熱にうなされては起き、朝は食欲もなく何も食べずに学校へ登校し、 授業といえばいつもぼ〜っとしているだけであった。 彷徨は委員会の会議で未夢とは一緒に帰れず、いつも6時頃帰宅だった。 未夢はいつも4時頃帰宅していたが、宿題もせずに眠っていた。 彷徨が帰って来た時はちょうどワンニャーが夕ご飯を作っている時間。 いつもなら未夢も食事の匂いにつられてやってくるはず。 だが今日は違った。 「未夢さ〜ん、ご飯ですよ〜っ!・・・あれ、おかしいですね、いつもテーブルで待ってる のに・・・。」 「おれ、未夢を呼んでくるよ。」 「はい・・・。」 「マ〜ンマッ!マ〜ンマッ!」 「どうしたんですかルゥちゃま・・・。」 「おい、未夢。ご飯だぞ・・・。・・・食べないのか?開けるぞ。」 彷徨は真っ暗の未夢の部屋に入った。 「どうしたんだ部屋を真っ暗にして寝て。眠いのか〜・・・?」 彷徨が電気をつけて未夢の顔を覗きこむと、未夢の苦しんでゆがんだ顔が彷徨の眼に入った。 「うううう・・・!」 「おい、未夢!どうした!?」 「あっ・・・ルゥちゃま突然暴れてどうしたんですかっ・・・彷徨さん!?」 「ルゥ!」 「マンマ〜!マンマ〜!」 「うううう・・・!」 「彷徨さん!未夢さんどうしたんですか!?」 「わからない・・・!何かうなされてるみたいで・・・。」 「うううう・・・!」 「未夢、さっきから左腕を抑えているが、どうしたんだ!?包帯取るぞ!」 彷徨が包帯を取ると、未夢の左腕は様子がおかしかった。 「こ、これは・・・!?どにかく病院だ!病院に連れて行くぞ!」 「は、はい〜!」 「パンパッ!」 「ワンニャーは留守でルゥを見ててくれ!」 「わかりました・・・!」 「マンマ〜っ!」 彷徨は未夢を背負い、全速力で病院へ走る。 その速度は、すさまじいスピード。 近くの病院につくと、カウンターの人へ尋ねる。 「すみません!こいつが急にうなされだして左腕の様子がおかしいんです!」 その様子をカウンターの人に見せると、こわばった様子でそれを見た。 そして奥の先生に急告。先生は、その子をこっちの部屋へと案内した。 「どうですか様子は・・・!?」 「・・・う〜ん・・・傷口に毒物でも入ったのかな?一週間くらい経っているように見える が、何をしたのですか?」 「それは・・・ちょっとある事件で凶器で腕をかすって、その後消毒して包帯していたのです が・・・今晩急にうなされだして・・・。」 「・・・多分、その凶器に毒物が塗られていたのだろう。だが安心して下さい。軽い毒です。 今すぐ治療しますから、そうすれば一週間ほどで治るでしょう。」 「・・・よろしく・・・お願いします・・・。」 彷徨は、未夢の治療が済むのを待った。 待っている間、様々な考えが起こり、自己嫌悪や怒りなどが彷徨の頭の中を駆け巡った。 (何であの時おれはすぐ病院へ連れて行かなかったんだ・・・!) そして待つ事約1時間。未夢が包帯姿で出てきた。 「・・・治療は無事に終わりました。一応これで大丈夫のはずなのですが、薬は渡して おきます。お大事にして下さい。」 「ありがとうございました・・・。」 「彷徨が私をここまで連れてきてくれたの・・・?」 「おれ以外に誰がいるんだ?」 「それは・・・。」 未夢は沈黙してしまった。 「おれの・・・おれのせいだ未夢・・・。」 「えっ・・・?」 「あの時、おれがお前に危ない思いさえさせなければこんな事には・・・。」 「ううん・・・もういいよそれは・・・。」 「・・・。」 「彷徨っ・・・待ってよ・・・。」 彷徨は早歩きでスタスタと歩いていく。足ではないとは言え、怪我をしている未夢にはその 早足に追いつけなかった。 彷徨は急に歩くスピードを遅め、未夢と並んで歩いた。 しかし、西園寺につくまで二人とも無言だった。 西園寺につくと、ルゥが真っ先に飛んできた。 「ルゥちゃまっ!急にどこへ・・・あっ!未夢さん彷徨さん!」 「ルゥ!」 「ルゥくん!」 「マンマっ!パンパっ!」 「ルゥ、もう未夢は大丈夫だぞ〜。」 「良かったです〜、ホントに良かったです〜。」 ワンニャーは涙を流してそう言った。 未夢の怪我もとりあえず落ち着き、その後の夕ご飯を楽しく過ごした。 だが、未夢の怪我はまだ完全に治ったわけではなかった。 日が昇ると毎朝未夢は左腕の痛みで起き、西園寺は騒然となった。 もちろん未夢は学校を休みにして、彷徨はそのまま学校へ行く。 学校には未夢はちょっと重い病気だと言う風に連絡してある。 「あれ彷徨?今日は光月さん一緒じゃねーの?」 「・・・別にいつもあいつと一緒に居るわけじゃねーよ。」 途中三太に出会うと、質問してきた事に対しそう言った。 学校に着くと彷徨は色々未夢について言われたが、彷徨は無言だった。 そんな彷徨の様子を、烈度たちは実に申し訳なさそうに視線をそらした。 クリスはと言うと、もちろん栗太をサンドバッグ代わりにしてストレス発散。 彷徨は、つまらぬ学校での授業を受けていた。 いつもなら授業の合間に未夢を睨んだりするのに、ちょっかいをかけるはずの未夢が居ない。 放課の三太のレコード話も、彷徨の耳には入っていなかった・・・。 家でルゥの面倒を見ながら未夢の看護をするワンニャー。 そして未夢を心配そうにみるルゥ。 未夢は、綺麗な瞼を閉じ安らかに眠っていた。 ルゥがマンマっと言いながら未夢の頭を叩いてみると、未夢はゆっくり瞳を開け、こう言う。 「ママはすぐ元気になるからね・・・心配かけてごめんねルゥくん・・・。」 そう言うと未夢は再びその眼を閉じ、今度は深い眠りについた。 「マンマーっ・・・?」 「ダメですよルゥちゃま。未夢さんは病気で、今一生懸命治そうと努力していますから ね〜っ。未夢さんの病気が治るまで、我慢しましょうね〜っ・・・。」 ルゥはワンニャーに連れられ、未夢の元を後にした。 一方学校では、お昼時間に入っていた。 綾とななみとクリスが机を隣り合わせにして弁当を食べている。 振り返れば未夢がいつもいるのに、今日は未夢の机はそこに隣りあわせではなかった。 未夢の机を見る彷徨に、三太は問い掛けた。 「どうした彷徨?何かいつもと様子が違うじゃん?あっ、光月さんが居なくて寂しいんだろ〜 そうだろ〜そうだよな〜。」 だが、そんな三太の煽りにも彷徨は全くの無視。三太の話すことなどどうでもよかったと 言わんばかりの反応。 しかし、未夢の事だと言う話は、今の彷徨にとって無視はできなかった。 (未夢のやつ、今頃ちゃんとご飯食べてるかな・・・?) その頃西園寺では、未夢の病状が悪化している頃にあった。 「わ、ワンニャーっ・・・!左腕の包帯、取り替えてっ・・・何か様子が・・・変!」 「あっ、はいっ・・・!こっ、これは〜っ・・・!」 見ると皮が破れて血が出ている。ワンニャーは悪血を拭き取り、新しいガーゼを傷口に伏せ、 包帯を取り替えた。」 「私があの時簡単に外なんかに飛び出していったから、彷徨が助けてくれたのに危ない目に あって、これって罪だよね・・・。」 「未夢さん、そのお気持ちはよくわかります。でも今は、傷だけでなく今の病気も治す事を 最前線に考えて養生して下さい。」 「うん・・・そうする・・・迷惑かけてごめんねワンニャー・・・。」 「それはこちらのセリフです・・・未夢さんたちにはいつもお世話になって・・・。」 「・・・。」 「さあ、包帯を取り替えましたよ。それにもうそろそろお昼ご飯の時間なので、食べて下さい ね。何にします?」 「今、食欲ない・・・。」 「ダメですよっ、栄養取らないとっ。」 「私より、ルゥくんにミルクあげて・・・。そう言えばルゥくんは・・・?」 「はい、ルゥちゃまは泣き疲れて、今わたしたちの部屋で静かに眠っています・・・さっき ミルクも飲ませましたから・・・。」 「ルゥくん、泣き疲れちゃったんだ・・・。」 二人とも悲しそうな目で、下のほうにうつむいてしまった。 「さあ、未夢さんはご飯の時間ですよ。食欲がないのなら、御粥だけでも食べて下さい。」 「今食欲ないって言ったでしょ・・・。」 しかしワンニャーは台所から御粥を持ってきてそれをスプーンですくい、未夢に差し出した。 「これで栄養をつけて、早く直して下さいね。ご自分のためだけでなく、ルゥちゃまや彷徨 さんのためにも・・・。」 「・・・うん・・・。」 未夢は食欲がないものの、ワンニャーの作ってくれた御粥を食べ始めた。 「ワンニャー、さすがシッターペットだね・・・料理満点・・・。」 「えっへん!こう見えても有能なんですよ〜っ。」 「あっはは・・・ワンニャーったら調子に乗っちゃって・・・ごほっごほっ・・・。」 「未夢さん、食べてる時はしゃべっちゃダメですよ〜っ。ゆっくり食べて下さいね。」 「ありがとう・・・。」 食欲がないと言っておきながら、未夢は御粥を全部食べてしまった。 「もうお腹いっぱい・・・。」 「はいっ、よくできました〜っ。」 「もう、私はルゥくんじゃないってばさ。」 ワンニャーはやさしく笑った。 「さあ、布団を整えましたよ。後のことはこのわたしに任せて、未夢さんはお休み なさい・・・。」 「うん、おやすみ・・・。」 一方、彷徨の居る学校。 授業は英語の時間。 だが彷徨は相変わらずぼ〜っとし、未夢の席をつらぬいて窓の外の空を見ていた。 「・・・くん・・・西園寺くん!」 「あっ、はいっ!」 「ここ、読んで。」 「えっ・・・どこですか・・・?」 「もう、聞いていなかったの?いいわ、座って。」 「あ、はい・・・。」 「ねえねえ、今日の西園寺くん何だか様子がおかしくない?」 「未夢ちゃんがお休みだから、寂しいのかな・・・。」 「未夢ちゃんがお休みだから彷徨くん寂しがってるですって・・・?それならわたくしが 盛り上げて見せますわぁ〜!」 周りのぼそぼそ声を聞いたクリスが授業中に突然机を持ち上げた。 「まあ花小町さん力持ちね!」 「はい!」 その様子を見ていた烈度たちは一体何を考えただろう。 慣れぬ雰囲気のまま授業を全て終えて、学校は下校時間となった。 彷徨はまっすぐ下駄箱の玄関へ向かい、靴を履き替えた。 「あれ?西園寺くん。今日、委員会の会議あるんだけど?」 栗太健在。彷徨を探していた栗太が委員会の会議のある事を告げる。 「悪いな、今日はちょっと用事があるんだ。今日は無理。」 「え〜、生徒会長の西園寺くんが居ないと困るよ・・・。」 「お前が居るだろ。何とか皆をまとめてくれ。またな。」 「あっ、ちょっと・・・。」 彷徨にとっては0コンマ1秒も惜しかった。 早歩きで帰ろうとすると、クリスが目の前に立ちはだかるように現れた。 「彷徨くん・・・今日は家でクッキーを作る準備を鹿田さんにさせましたの・・・ 良かったら、ご一緒してわたくしの家まで来て下さいませんか・・・?」 「悪いな。今日はちょっと急いでて委員会も休ませてるんだ。またな。」 そういって早歩きで歩き始めようとすると、クリスは学校出口の正門に立ちはだかった。 「そぉ〜んなに未夢ちゃんの事が心配なのですねぇ〜〜〜!!! そして彷徨くんは未夢ちゃんに口移しでご飯を与えちゃうのねぇ〜〜〜!!!」 「・・・いい加減にしろ花小町。今そう言う事言ってられる余裕があると思うのか?」 「そんな・・・!」 彷徨はクリスを圧倒し、その場を後にした。 クリスはその場にがくっとひざを地面につけ、力がぬけたように肩を落とし手も地面に つけた。 彷徨が早く早くと家に帰ろうとするところに、漫画家の山村みかんがどこからともなく 現れた。 「あれぇ〜?彷徨くんじゃないのお〜?どうしたの?こんな早歩きでぇ〜。」 そんな事を言いながらひょうきんな声とともに、みかんさんもついてくる。 「ちょっと、用事があって・・・すみません。急いでいるんです。」 「そう言えば、近所の奥さんに会ったわよ〜。ルゥくんがお家に戻りたがってたわよ〜。 何かあったのかしらね〜。 奥さんは買い物に行くって〜。」 彷徨はそれを聞くや否や、走り出した。 「あっ、ちょっと・・・んもう!何かネタになると思ったんだけどなぁ〜・・・他をあたろう っと!」 彷徨は西園寺の長い階段を数秒で登り終えると、あっと言う間に未夢の元へ。 「はぁはぁ・・・未夢大丈夫かっ!?」 未夢の返事も聞かずに部屋の戸を開けると、未夢は静かに眠っていた。 その様子を安心した彷徨は心の底から落ち着いた。 (良かった・・・。) その後彷徨も自分の部屋で眠ることにした。いや、眠る以外何もなかった。 6時になるとペポとルゥとワンニャーが買い物から帰ってきた。 「ただいま戻りました〜っ。」 「マンマーっ!」 「ペっポーっ!」 ペポとルゥが未夢の部屋に入ると、ペポもルゥもその部屋で未夢と一緒に寝てしまった。 「あれ、彷徨さん帰ってきてたんですかっ・・・。」 彷徨がワンニャーの声に気付き、目を開けた。 「あ・・・ワンニャーおかえり・・・。」 「どうしたんですか?今日は委員会はなかったみたいですね?」 「いや、今日は早く帰ってきた。でも未夢が無事だったみたいだから、おれも寝て た・・・。」 「そうでしたか・・・それでは今からご飯を作ってきますね。」 「あ、おれも手伝うよ。」 「・・・。」 未夢は暗い部屋の中でゆっくりと目覚めた。 「今何時だろう・・・?」 「起き上がって電気をつけようとすると、自分の手が何かに握られている。」 「マンマっ・・・。」 「ルゥくん、一緒に寝ていてくれてたの・・・?」 「ペっポ〜・・・。」 「ペポも・・・ありがとう・・・。でもこんな所で寝てちゃカゼ引くよ〜・・・。」 未夢は電気をつけ、自分の毛布をペポとルゥにかけてあげて、再び電気を消した。 そして台所のほうへ赴くと、ワンニャーと彷徨が料理を作っていた。 「ワンニャーっ、ほうれん草とってくれーっ。」 「わかりましたーっ。」 「彷徨、何やってるの・・・?」 「おっ!未夢!風邪と腕は大丈夫なのか?」 「あ、未夢さん!」 「今日は彷徨も料理作ってくれてるの?」 「ああ。何か?」 「え、何でもない・・・。」 「そうか。もうすぐできるからそこで座ってろよ。」 「未夢さん、パジャマじゃ風邪をこじらせちゃいますよ〜っ。」 そう言うとワンニャーは料理で汚れた手を水で洗いタオルで拭き、別の部屋から毛布を 持ってきた。 「これを体に巻いてください。暖かいですよ〜。」 「うん。ありがとうワンニャー。」 「そう言えば、ルゥたちはどうした?」 「ルゥくんなら、私の部屋で毛布かぶって寝てるよ〜。」 「・・・そっか・・・。」 しばらく経つと、料理が出来上がった。 未夢がルゥたちを起こしに行った。 ルゥは起きるとペポと一緒に喜んで未夢に抱きつき、未夢もルゥとペポを抱いて部屋から 出てきた。 「未夢、起きてて大丈夫か?」 「うん。大丈夫だよ。」 「大したことにならなくて良かったですね〜。」 ワンニャーと彷徨の暖かい言葉と料理を頂きながら、未夢はルゥにミルクを飲ませた。 「ペポ〜・・・。」 「あっ、ペポっ!ダメですよ!今日のご飯はこれで終わ・・・えっ?」 ペポはご飯をおかわりすると、その茶碗を未夢に差し出した。 「えっ・・・?」 「ペポもっ。未夢に早く元気になってほしいんだってさ。」 「ペポ、ありがとう・・・。」 「ぺっポーっ!」 ペポは喜んでちゃぶ台の上を舞った。 「でも、もうお腹いっぱいだよ?」 「ペポの愛情を食べられないって言うのか〜?」 「わかりましたよ。喜んで頂きます。彷徨もいつになくやさしいし料理も作ってくれたし。」 「いつになく、は余分だ。」 「あっはは・・・。」 未夢はお腹いっぱいと言いながらもペポの大盛りをさくさく食べていき、茶碗の中をからっぽ にしてみせた。 「おいしかったよ〜。」 「お前意外と嘘吐きだな。お腹いっぱいとか言ってたくせに。」 「うん。でも食べれた。」 「未夢さんの元気が戻ってきた証拠ですね〜っ。」 「マンマぁっ。」 「ルゥくんも私の元気が出たの喜んでくれるの〜っ?」 「あ〜いっ!」 「ルゥのためにも早く治さないと怒るぞ。」 「私だって早く学校行きたいよ。そう言えば何か宿題でなかった?」 「英語と数学と理科・・・。」 「え〜っ・・・何でこんな時に限って3個も宿題出すのよ〜・・・。」 「おれが出した訳じゃねえ。」 「それはわかってるけど・・・あ〜もう眠くなってきた〜。」 「そうですか〜。未夢さんお休みなさい・・・。」 「うん、また明日〜・・・。」 彷徨は未夢の去る姿を見送った。いつもはさらさらの髪も艶を失っていた。 ルゥは不満そうに未夢の後を見る。追いかけそうになったがワンニャーに止められた。 彷徨も後の自分のやるべき事だけはやっておいて、眠りについた・・・。 翌日、慌しい声が聞こえる。 「あ〜っ!もう8時じゃない!彷徨!ワンニャーっ!何で起こしてくれなかったのよ〜っ!」 「・・・んっ・・・?未夢〜・・・?」 「何ですか朝早くから・・・。」 「二人とも何寝ぼけてんのよ!もう8時!学校に行く時間でしょーっ!?」 「・・・未夢・・・風邪、治ったのか・・・?」 「当たり前でしょ!もうそんなのとっくに治ったわよ!」 「ん〜・・・今何時ですか〜・・・。」 「8時って言ってるでしょ!ワンニャー朝ご飯作ってないの!?」 「ええっ!もう8時ですかっ!・・・って未夢さん風邪は?」 「大丈夫だって何回言わせるのよ〜っ!ああ〜今日は朝抜き〜!?二人とも寝ぼけてる 〜!!」 「だぁーっ!」 ルゥが未夢の頭に飛び込んできた。 「未夢、治ったのか・・・良かった・・・。」 「そんな事より!彷徨学校!」 「でも今日、日曜日だぞ?」 「えっ?」 日付を見ると今日は確かに日曜日。 ニュースを見ても今日は日曜日。全国快晴の天気だそうだ。 「・・・。」 「早とちりだな〜。」 「未夢さんが戻った〜っ!」 「マンマーっ!」 「う・・・。何でこうなるのよーっ!」 彷徨もワンニャーもそんな未夢の事を笑った。 だがその笑顔は、家族の一員が戻ってきた喜びだったのかもしれない。 四人はその日曜日、モモンランドへ遊びに行った。 いつもの苦労を忘れて、久しぶりに家族四人で楽しんだひと時だった。 月曜日、未夢と彷徨が一緒に登校している姿を見た同学生徒は、その様子を楽しそうに見た。 やっぱりあの二人はおそろいだな、と。 教室に入るとやはり皆にもてはやされ、烈度たちは野次に行かなかったが後で未夢たちの様子 を伺って心配してくれた。 聞くとお見舞いに行こうかと思ったが邪魔すると未夢の病状が悪化するかもしれないと思って 行き辛かったそうだ。 未夢はそんな話を聞いて嬉しかった。 未夢の笑顔を見た綾とななみも喜んでくれた。 彷徨に聞くと、未夢の居ない間二人とも落ち込んでいたようだ。 「皆のおかげだよ!」 未夢は自分の病気が治ったのも周りの心配があったからだと言った。 心の中でワンニャーと、そして彷徨に強い礼感情を抱いたのは言うまでもなかった。 その後、未夢の左腕の傷も無事に回復し、心配された残痕もなく、綺麗な腕を取り戻した。 (何か色々あったけど、未夢が無事でよかったよ)