『未夢の誕生日2』 何だか家につく最後の最後まで色々あったなと思う一時。 疲れているような疲れていないような、よくわからない残り体力。 階段を上り終えて、ドアを開けようとするが開かない。 どうやら彷徨ルゥワンニャーペポそろってまだ帰ってきてないらしい。 鍵を使ってドアを開けると中は真っ暗。 そりゃそうだよね。誰も居ないんだから。泥棒が居るわけじゃないし。 居間の電気を付けておいて、それから自分の部屋に向かった。 荷物とプレゼントをおいてどさっと自分も横になる。 横の荷物を見て未夢は思った。 何だかたくさんプレゼントもらっちゃってみんなに悪いな。 クリスちゃんには会わなかったけど忘れちゃってたのかな。 心の中で噂をするとピンポン連打が。 ・・・ぉぃぉぃぉぃ。 疲れた体の重い腰を上げて再び玄関へ。 するとそこには予想通りクリスの姿が。 「未夢ちゃん、夜遅くごめんなさい。」 「ううん大丈夫だよ。どうしたの?」 「未夢ちゃん、誕生日おめでとうございます。」 するとクリスは白い箱を未夢に渡した。 「バースデーケーキですのよ。良かったら召し上がってください。」 「ここでちょっと見ていい?」 「えっ・・・そんな、恥ずかしいですわ。」 と言われながらも箱を開けて見る未夢。 「うわあ〜♪すごいすごい!クリスちゃん一人で作ったのっ!?」 「わたくし一人の力では無理ですわ。鹿田さんやももかちゃん、 栗ちゃんまで手伝ってくれたんですのよ。」 「そうなんだ・・・本当にありがとうね。ももかちゃんたちにもお礼伝えてくれる?」 「もちろんですわ。・・・あの・・・ところで彷徨くんはいらっしゃらないんですか?」 「うん。今朝から出かけちゃってまだ帰ってこなくてそのまんまだよ。 全くいつ帰ってくるのやら・・・ぷんぷん!」 「そうなんですの・・・。それでは夜分失礼しました。ごきげんよう未夢ちゃん。」 「うん。わざわざありがとうね。バイバイ、クリスちゃん。」 ぴしゃっ。 はぁ〜。 何か今回は普通に終わったな。 彷徨がまだ帰って来てなかったからだろうけどさ。でも何か珍しいよね。 ケーキを喜びながら家の中へ運ぼうとする未夢。 すると突然玄関のドアの開く音が。 「えっ?」 「未夢ちゃん誕生日おめでとぉ〜♪」 「未夢さん、誕生日、おめでとう。」 ・・・みかんさんだ。 それにみずきさんも♪ 「あ、ありがとうございます・・・ってみかんさん酔ってませんか?」 みかんは何故か着物を着ておちょこを持っている。何か祭りと勘違いしてないだろうか。 「ごめんね未夢さん。ねーちゃん自分の事のように喜んでてお酒入ってるから。」 「い、いえいえっ!とんでもないですっ!」 未夢はちょっと恥ずかしそうにみずきに謝る。 みずきさん相変わらずカッコイイなあ♪ 彷徨が横に居たら嫉妬するかな。ふふっ。 「ところで、彷徨くんいないのぉ〜?」 「あ、彷徨は今出かけてます。」 「あ〜このケーキ結婚式に持ってくケーキぃ〜? ずるいぞぉ未夢ちゃん!私だってまだ結婚してないのにぃ〜!」 「ち、違います!」 「ねーちゃん!全くもう・・・未夢さん本当にごめんね。」 「そんなっ!わざわざ来て頂いて嬉しいです!」 「それじゃあ今日はもう帰るね。ねーちゃんが何やらかすかわかんないし。 ほら!行くよねーちゃん!」 「未夢ちゃん結婚してぇ〜!」 ・・・え? 相当酔ってるねみかんさん。お大事に。(?) 一騒動の後未夢は再び家の中へ。 家に居ても何か来たり疲れるんだけど、暇しないし楽しいからそれはそれでいいかなあ♪ それにしても西園寺って不思議なところだな。来るものは拒まずって言うか、 何か色々と来るし。 そう思いながらケーキを居間の机に置く。 ケーキを見ながら未夢は思った。 一番欲しいのはプレゼント自体じゃなくて、彷徨からプレゼントを貰うって事。 それが何でも構わない。彷徨からなら何でもいい。 彷徨からプレゼントを貰いたい。 一番欲しいものは、物自体じゃなくてそう言う出来事なんだと思った。 皮肉なことに彷徨からだけプレゼントを貰ってない。 何だか・・・心が寂しい。 ・・・――― 「ただいまー。」 「ただいまです〜っ。」 「マンマっ!」 「ペポぉ〜!」 ん・・・あれ、帰ってきたっ。 どうやら寝てしまったらしい。居間の机にケーキを置いて そのまま机にうつ伏せになっていたら寝てしまっていた。 「どこ行ってたのよ〜!遅いじゃない!」 「まあまあそんなに怒るなよ。」 「三太くんに聞いたわよ!三太くんに会わずにどこ行ってたの!?」 「・・・未夢、誕生日、おめでとう。」 「未夢さんっ、誕生日おめでとうございます♪」 「マンマっ!」 「ペポぉ〜☆」 いきなりかけられた幸せ。 何だろう・・・嬉しくて、幸せで、不思議と涙が溢れてくる。 「わかったわかった。泣くなって。」 そう言うと彷徨は未夢をそっと抱いて頭に手をやってぽんぽんと叩く。 「・・・ちょっと・・・ルゥくんたちが目の前に居るのに・・・。」 泣きながら照れる未夢。 「わたしも恋人探しましょうかね〜っ!わたしは優秀ですからっ、 すぐ見つけちゃいますよ〜っ!」 「だーあ☆」 「ペポ〜っ!」 未夢は何だか色んな感情の状態。 今日は暇で、でもそれから出かけて楽しくて、嬉しくて、でも寂しくて、でもそこからまた 幸せで、恥ずかしくて、照れくさくて、 今のワンニャーの言葉で苦笑いで。 「はいはいっ、わたしたちは今の未夢さんたちのオジャマムシになっちゃいますから、 先に向こうに行きましょうね〜ルゥちゃま〜。ペポもですよ〜。」 「あ〜うっ。マンマっ、パンパっ。」 「ペポペポ〜♪」 ・・・ワンニャー、気が利かなかったり気が利いてたり、何なんだよ。 「寂しかったか?」 「・・・うん・・・でも今日は綾ちゃんたちとお出かけした後色んな人に会って プレゼントまで貰っちゃって、今までこんな嬉しい事なかったから喜んでた。 けど彷徨が居なくて・・・。」 「わかったわかった。とにかく向こうに行こう。ルゥたちも待ってるぞ。」 「・・・うん!」 愛しい人の声を今日やっと聞けた。 それはちょっと遅かったけど、それなりに嬉しさがこみ上げてくる。 居間に向かう彷徨にてとてとついて行く未夢。 こう言う時は本当に子供っぽい感じが。 「あ〜っ、何かすごいケーキですね!どーしたんですかっ?」 「きゃっきゃっ♪」 ルゥとワンニャーが興奮している。未夢は答えた。 「それはついさっきクリスちゃんが来て、ケーキ作ってきてくれたから 持って来てくれたんだよ。」 「すごいですね〜っ!」 「ペポぉ〜っ☆」 「あ、そうそうお前の母さんたちから手紙が来てるぞ。」 「えっ、ほんとっ!?」 未夢は驚いて彷徨に聞くと、彷徨はすっと手紙を差し出した。 確かにママの文字だ! 未夢は手紙を開いた。 かさっ・・・ ==================================== ママから 未夢、誕生日おめでとう。ちゃんとその日に届いているかしら。 もうすぐで日本に帰れるからね。待っててね。 今最後の調整で忙しくて手紙しか送れないけど帰ったらちゃんと したプレゼントあげるからね。 それじゃあもう少しの辛抱だから頑張ってね。 パパから 未夢、青春してるかっ。パパも青春してるぞ〜っ! 今まで勉強して来た事がママの夢に役立つんだ! こんなに嬉しい事はないよ! それじゃ、ママの夢が叶うとともに、 未夢、誕生日おめでとう! ==================================== ・・・パパもママも、忙しくても海の向こうで、同じ空の下で、 私の事をちゃんと思ってくれてるんだ。 未夢は再び嬉しさにじ〜んと感動した。 「良かったな、未夢。」 そして隣には愛しい人。 今日は今までの人生で最高に幸せな日だよ。 嬉しくて涙が止まらない。 「汚い顔するな。鼻かめ。」 そう言ってティッシュを渡そうとする彷徨。 せっかく感動してたのに! ばっ!とティッシュを奪い取るかのように受け取る未夢。 「くすん。」 「お前は笑ってる方が似合うからな。」 そう言ってやさしく微笑みかける愛しい人。 「マンマー!」 自分の胸に飛び込んでくる天使。 「未夢さん、みんないつでも未夢さんの事を思っていますからねっ!」 優秀なようなおっちょこちょいなような、可愛いようなシッターペット。 「うん・・・!」 涙を拭い取って笑う未夢。 作ってる内にこんな家族があったら羨ましいな〜と切に思う作者であったpart2。 「で、今までどこ行ってたの?」 「ワンニャーと一緒に工房に行ってたんだよ。」 「今日は何だか楽しかったです〜っ♪」 「だあ〜ぁっ!」 「ペポペポペポ〜っ☆」 「・・・工房???」 何でそんなところに??? 「ほら未夢、遅くなったけど、誕生日プレゼントだ。」 「未夢さんのために作ってきました♪」 「マンマぁ〜っ!」 「ペポー!」 彷徨は金の太陽と銀の月の形をしたネックレス型キーホルダーを、 ワンニャーは金色のみたらし団子を、 ルゥは未夢の顔の絵を、 ペポはみずあめの形をしたものを差し出した。 「彷徨、ありがとう・・・!」 もう枯れるかというほど涙を流しても不思議な事にいくらでもあふれる涙。 止めても止まらず出てきてしまう雫は、彷徨にとって恐らくダイヤモンドよりも貴重な、 幸せなものとなるだろう。 「ワンニャー、未夢さんのために作ってきましたって、みたらし団子じゃない・・・。」 涙を拭きながら苦笑いの未夢。ワンニャーにはいつも笑わされるな。 でもワンニャーらしいって言うか。 「ルゥくん、これ私の絵っ?上手いよ、ありがとう〜っ!」 ぎゅっとルゥを抱く未夢。本当のお母さんの気持ちがわかるくらいだ。 「ペポも一生懸命作ってくれてありがとうね!」 ペポはお菓子が好きで、プレゼントがお菓子の形をしているがそれでも 一生懸命作ってくれた気持ちが伝わってくるようだ。 綾ちゃんやななみちゃんが言ってたのはこの事だったんだね。 『家に帰ればわかるよ』 「は〜なんか久しぶりに凝った事やったから疲れたな〜。 ワンニャーご飯作ってくれ〜っ!」 「わ、わたしも疲れてます・・・。」 「だぁ〜・・・。」 「ペポぉ〜・・・。」 みんなたいそう疲れているご様子で。ルゥやペポはご飯を食べる前に寝てしまいそうな 雰囲気。 「でも!今日は未夢さんの誕生日ですから、力振り絞ってごちそう作っちゃいますよ〜っ!」 「だ〜ぁっ!」 「ペッポ〜っ!」 疲れに耐えてやるべき事をやりだしたワンニャー。 ルゥもペポも睡眠に耐えて起きようとしている。 「ルゥくんとペポは、ワンニャーがご飯作り終えるまで寝てて大丈夫だよ。 ちょっと時間かかるから待っててね。ね〜むれ〜、ね〜むれ〜・・・♪」 綺麗な声で歌いだす未夢。まるで催眠がかかったようにルゥたちはうとうとと眠りだした。 「未夢・・・おれまで眠くなっちまうよ・・・。」 彷徨も目を頑張って開けようとするが心地よい音に心を奪われて眠りにつきそうになる。 だが彷徨は頑張って耐えた。ご飯後なら耐える必要なんてないのだが。 ルゥを眠りに付かせると、彷徨はワンニャーの側に言って料理を手伝い始めた。 「あっ、私も手伝うよ!」 「未夢はそこで待ってろよー、今日はお前の生まれた日なんだからな。」 誕生日を生まれた日とわざわざ言い換えると何だかまた微妙に違う感動を味わえる。 そして夕ご飯が出来上がった。 肉やら野菜やらデザートやら、すごい夕食だ。ディナーみたい。 「ルゥちゃま、ペポ、ご飯が出来上がりましたよ〜っ。今日もみんなで いただきますをしましょうね。」 「あ〜い。」 「ペポ〜っ。」 「いただきます!」 楽しかったけど何だか泣き疲れてたりした未夢はお腹が空いていたみたいで 結構な食欲だった。彷徨もプレゼント製作に集中して疲れていたためお腹ペコペコ。 ワンニャーもみたらし団子を食べる勢いでご飯を食べ、 食欲盛りのルゥとペポはどんどん料理を減らしていく。 食べ物に夢中になりながらも雑談したりとても楽しい夕食。 未夢にとって今までの誕生日は悲しむためにある日といっても過言じゃなかった。 それが突然やってきた幸福に嬉しさをいつも以上に感じていた。 あっという間にごちそうを平らげた西園寺一家は休憩につく。 「はぁ〜食べた食べた〜っ。」 「おいしかったな〜。ワンニャーご苦労様だよ。」 「もうお腹いっぱいです〜・・・えっへん!優秀ですからね☆」 「だ〜あっ!」 「ペポ〜!」 「さて、最後はケーキだ。花小町に感謝しなくちゃな未夢。」 「うん!」 「ろうそく持ってきましたよ〜っ。後クラッカーもっ!」 「だ〜あ!」 「ペポー!」 「電気消そうぜ。」 彷徨が居間の電気を消すと、縁側から降り注ぐ月の光に反射したケーキの箱が 不思議に聖なる光を発しているように感じる。 箱を開けケーキにろうそくを立て灯火をつけていくワンニャー。 クラッカーをルゥとペポに持たせ、合図するまで紐を引っ張っちゃいけないように教える 彷徨。 そして祝いの歌。 「はっぴ〜ば〜すで〜とぅーゆ〜、はっぴば〜すーで〜つぅーゆー・・・♪ ハッピバースデーディーア未〜夢(さ〜ん)〜・・・ ハッピバースデートゥーユー〜・・・♪」 聞いてる内に昔の小さい頃を思い出してきた未夢。 小さい頃、パパとママにこうやって祝われてたんだよね。 彷徨たちが自分のために歌っているのを聞いてる内に何だか 恥ずかしくなってきた。 そして歌が歌い終わってろうそくの灯を消していく。 灯を消し終わるとパチンと彷徨が指を弾いてルゥたちに合図。クラッカーの爆音が鳴った。 パーン☆ 電気を付けるワンニャー。息ぴったり大成功♪ 「もう、うれしくてどう言う表現すればいいかわからないや!」 未夢は開き直ったように笑顔を振り撒く。 こうして未夢の幸せな誕生日は幕を下ろしていった。 ===================================================================== written in 2003.10.03