『関係の接近 −1−』 「未夢ー。今から牛乳と卵買ってきてくれー。在庫切れてたの忘れてた。」 『えー!何で私なのよー!』 「いいから。お前しか居ないだろ。頼んだぞ。」 プツッ。 携帯電話、いつもはワンニャーとの連絡のためにワンニャーと未夢が持っていたが、 最近は未夢と彷徨がすぐ連絡できあうようにするために、未夢と彷徨が持っていた。 今日も、未夢が先に帰ってしまってて、彷徨は委員会で、ワンニャーはルゥとペポと モモンランドで、彷徨が買い物当番だったが未夢に頼むのを言い忘れてて携帯電話で 連絡したのだ。 電話をおれが持ってから、未夢に言い忘れること多くなったなあ。 バカ。って。 まあそんな事はどうでもいいが、最近未夢に結構任せてしまっているような気がする。 いや、そうなんだ。 彷徨は委員会後、直行で家に帰った。 「ただい〜、ま・・・。」 「よっくもまた買い物させてくれたわね〜・・・!」 彷徨が玄関に入ると、未夢が立ちはだかっていた。 「あっ、いやっ。悪かったよ。今度こそおれが行くから・・・。」 「ま〜たそんな事言ってっ!最近委員会多いからって私に買い物押し付けられても私は くたくたよ!」 「だって、ワンニャーが最近『未夢さんと彷徨さん、たまには買い物お願いしますよっ!』 なんて言うもんだから行かなくちゃならないだろ。それに他はお前しか居ないし。」 「うっ・・・それはっ・・・。」 未夢は、疲れているのをよそに、自分が頼りにされているんだと思って自信を持った。 「はいはい。彷徨さんは役立たずだからね〜。私が行けばいいんでしょ行けば!」 「悪いなっ。今度はちゃんとおれが行くから。とりあえず家に上がらせてくれ。」 「あっ、ごめんごめん。」 「ただいまですーっ!」 「だぁー☆」 「ペポっ!」 彷徨が家に上がろうとすると、ルゥたちが帰ってきた。 「わんにゃぁーっ♪」 ポムっとワンニャーが変身を解いた。 「あれっ、彷徨さん。玄関でどうなされました〜っ?」 「お、ルゥおかえり。ペポも。ワンニャーも。おれもさっき帰ってきたばっかりでさ。」 「そ〜ですか〜っ。さ〜ってっ、今日も夕飯の仕度です〜っ!彷徨さん、ちゃんと買ってきて 下さいましたっ!?あれっ、買い物袋がないですね・・・。」 「委員会で買いそびれて、未夢に頼んだら説教食らってた・・・。」 「へへっ。でももういいよ。ココ彷徨の家なんだから、さあ早く入って疲れ癒してっ。」 「はぁ〜今日も疲れましたぁ〜。」 「お前は遊び疲れたんだろ。」 「グサッ!」 「だぁーい!」 「ペポペポー☆」 「ルゥくんたちの元気は、底なしね。ふふっ。」 (もうすっかり、未夢もワンニャーも西園寺の住人だな・・・。) 彷徨は彼らの背中を見ながらそう思った。 「どうしたの?彷徨、早く入りなよ。」 「ああ。」 「今日はかぼちゃ料理です♪」 「おっ!いいじゃん〜。」 「また〜!?」 「じゃあ他に何がいいんだよ・・・。」 「いいよ・・・かぼちゃで・・・。」 「潰せば、ルゥちゃまにも食べれますし、栄養になるんですよ〜っ。 とってもヘルシーですね☆」 「そうだぞ。かぼちゃをなめるな!」 「へ〜い・・・彷徨ほんとにかぼちゃ好きなんだね〜・・・。」 「じゃあお前は何が好きなんだ?」 未夢は彷徨にまっすぐ見られて言われたのでドキッとした。最も、向こうは普通に 未夢を見ていっただけなのだが。 「わ、私は・・・カスタードプリンが好き〜。」 「甘いものか〜。最近疲れてるんなら栄養になったりするかもな。」 「プリンをなめるな!よ〜。」 「アイスは舐めなかったらどう食べろって言うんだろうな。」 「彷徨さんっ、それ面白いです〜っ!」 「きゃっきゃっ♪」 「ペポペポペポっ!」 ペポルゥワンニャーが笑ってくれた。 「彷徨、冗談なんて今まで言わなかったのに、珍しいよね〜。」 「そうか?」 確かに彷徨は今までそんなに簡単に冗談など言わなかった。言う気にもならなかった。 しかし、この家族の雰囲気が彷徨の固い?性格を柔らかくさせてくれたのかもしれない。 「ワンニャー、ごはんお代わりだっ。」 「すごーい彷徨っ。よくそんなに食べれるね。」 「最近疲れてるからな。それにかぼちゃは上手いんだよ。」 すると未夢が微笑んだ。 「うくくっ・・・。」 「なっ、何がそんなに可笑しいんだよっ。」 さすがの彷徨も少し恥ずかしかったらしく、少し顔を赤らめて言った。 「だって・・・ふふっ。彷徨ったらかぼちゃ好きを私にばらしてからかぼちゃかぼちゃ って・・・それに、何となくギャップが激しくて・・・でもまあ彷徨にはかぼちゃが 似合ってるよ♪」 未夢は笑顔でそう言った。 「あ、ああ・・・。」 彷徨は少し照れて言った。 「あー?彷徨今少し照れたでしょー!?」 「確かに、今彷徨さん顔赤かったですよーっ。」 「ばっ・・・照れてねえよ!」 「彷徨が照れたー!」 「彷徨さんが照れましたー!」 「お、お前ら・・・!」 彷徨が手に怒りマークをつけてふるふると震えていると、ルゥが叫んだ。 「パッパー!てれーっ!」 「えっ・・・。」 「ほーら、ルゥくんもパパが照れたって言ってるじゃないー。彷徨ぁ〜♪」 いつもは彷徨が未夢を冗談でからかうのに対して、今日は未夢がよくからかっていた。 「ちっ。勝手にしろっ。」 「あ〜すねちゃった!」 未夢は笑いながら言った。 「未夢さんダメですよ〜あんまりからかっちゃ。彷徨さん困ってるじゃないですか〜。」 とワンニャーも言うものの、ワンニャー自身も笑っている。 「ワンニャーだって・・・。それにいつもからかわれてるから、今日は思いっきり攻撃 するのよ〜!」 「日頃のお返しかよ。」 「そーよ!女の恨みは深いんだからぁ〜!」 「そ〜いうもんなんですか〜っ。」 ワンニャーがにっこりそう言った。 楽しい夕食。 彷徨は、とても幸せだった。 ありがとう・・・。 彷徨は何となく感謝の気持ちで一杯だった。 「あれっ?彷徨、もういいの?」 「ああ、さすがに腹ふくれた。ごちそうさまワンニャー。やっぱりお前の料理は美味いよ。」 「優秀なんです〜っ!」 「未夢のはハッキリ言って『毒』だからな。」 「な・・・今に見てらっしゃい・・・その毒を食べて黙らせてあげるわよっ。」 「もうちょっと料理が上手くなったら耳を貸してやるよっ。」 「な・・・っ!」 「彷徨さん、反撃ですね。」 ワンニャーが皿洗いをしながら振り返ってそう言った。 「風呂に入ってくるな。」 「入ってらっしゃいませ〜っ!」 彷徨がそう言うと、ワンニャーが快く入ってらっしゃいの返事をくれた。 「未夢、入ってくんなよ。」 「入るわけないでしょ!彷徨のバカ!」 「はぁ〜・・・。」 風呂で体を洗い、風呂桶の湯に深く浸かって深呼吸。 体が溶けそうなほど心地よい。 疲れも何もかも飛んでいく。 それは風呂の湯だけでなく、いつもの雰囲気からくる楽しさもだった。 毎日が楽しい・・・。 騒がしさも慣れ、楽しさへと変わっていった。 それでも、クリスが暴れる時だけは慣れる訳もなく怖いが。 そんなことを考え、彷徨は笑いながら風呂から出た。 寝る時の服に着替えて、夜の涼しい風を浴びながら廊下を歩いていると、未夢が歩いてきた。 「ルゥたちは?」 「もう寝たよ。ワンニャーが部屋に連れて行ったよ。」 「そうか。」 「どうしたの?」 「いや。お前も風呂に入ってくるといい。」 「うん。そうさせてもらうね。」 「見ないでよ。」 「頼まれても見ねー。」 「誰も頼まないわよ!」 今日も暑いな。 自分の部屋に入って扇風機を回して風呂上りの一時。小さい明かりをつけて寝っ転がって 小説を読んでいたら何時の間にか寝てしまっていた。 未夢が風呂から上がってきた頃廊下を通り縋ろうとすると、彷徨の部屋の戸がかすかに 開いていた。 彷徨?もう寝たのかな。 中を覗くと、小説の本を顔に載せてぐったり仰向けで毛布もかけずに寝てる。 「彷徨、風邪引いちゃうよ・・・。」 ごめんと小声で言いながら恐る恐る彷徨の部屋に入る未夢。 側の毛布をかけてあげると、何やら寝言が・・・。 「未・・・夢・・・。」 「えっ・・・!?」 未夢は自分の名前を言われて驚いた。と言うより、ドキッとした。 「彷徨・・・。」 未夢はしばらく彷徨の側にいた。すると彷徨が寝返りを打って顔に乗せていた小説が落ちた。 そして、 「お前って・・・ホント〜ドジだな・・・。」 「なっ・・・夢にまで私をバカにするのかコイツはっ・・・。」 未夢は手をグーにして彷徨を殴りたくなった。 でも、うふふっと微笑んで、そっと彷徨の部屋から出て行った。 「彷徨、ゆっくりお休みっ・・・。」 そしてしばらく廊下の風で涼んでから、未夢も自分の部屋で寝る事にした。 「何だか、最近未夢ちゃんと西園寺くん、関係が近寄ってきてるよね〜っ!」 「そうだね〜。それと同時に光ヶ丘くんの嘆きやクリスちゃんの暴れが酷くなってきてる けどさ〜。」 綾が待ってましたと言うような感じでななみにそう言うと、ななみは悲観的な方の事を 言った。 「何か何か何か、スゴイネタになりそうな気がしてきたよ〜!!」 「ま〜た〜かい・・・。」 綾のこの性格にはさすがのななみも参ってしまう。 そう話していると光ヶ丘とクリスがやってきた。 「おはよう!愛しのるぇでぃーたちよ!今日も永遠のバラを、君たちに捧げようでは ないか〜!」 「おはようございます、ななみちゃん。綾ちゃん。」 「おはよ〜。」 「おはよ〜。」 『クリスちゃんって、普通にしてると大人しいんだけどねぇ〜・・・。』 ななみが小声で綾にそう言った。 『でも、クリスちゃんからあのぶち切れを取っちゃったらキャラ薄くなっちゃうよ・・・。』 『綾、またネタみたいに・・・。』 「何のお話ですの?」 「あ、なんでもないなんでもない、こっちの事だよ〜。」 「?」 クリスが頭に?マークを浮かべて疑問に思っていた。 そうしていると、噂の未夢と彷徨がいつもと一緒に登校してきた。 「みんなおはよ〜!」 「おはよう、未夢ちゃん。」 「未夢おはよ〜。」 「おはようございます、未夢ちゃん!」 「未夢っちぃ!おはよう!今日も綺麗だよ!」 台詞だけで誰が言っているのかわかるほど彼らはキャラが濃いから作者も書きやすいです。 「おう、彷徨、押〜忍っ。」 「お〜三太。」 「今ね、ちょうど未夢ちゃんの話してた所なんだよ。」 「私の?陰口はやだよ。」 「違う違うってぇ。」 ななみが笑いながら否定した。 「最近、西園寺くんとよーやくくっついて来たねってさぁ。」 「はぁっ?私と彷徨っ?」 未夢はビックリしてつい大きな声を出してしまった。 その声はもちろんクリスにも届く。 「未夢ちゃんと彷徨くん・・・未夢ちゃんと彷徨くん・・・未夢ちゃんと彷徨くん〜♪」 クリスは意味不明のリピートをしながら掃除道具からホウキを何本も取り出した。 何刀流っ!?両手に持って、口でくわえて、両足で持って(?)、背中で持って(?)。 「鹿さんだよ〜。」 「あら、可愛い鹿さん♪なでなで☆」 クリスは鹿になだめられた。 「ななみちゃん、何それ?」 未夢が聞いた。 「最近クリスちゃんの切れ具合がすごいから、抑制のために買ってきたマスコット〜。 何気に可愛いでしょ♪」 「あ〜可愛い〜♪」 未夢も綾もその鹿に見入る。 「で、話戻すけどさ未夢、最近西園寺くんと仲良いでしょ。」 「まあ、ここんところ喧嘩とかはしてないよ〜?」 「余計怪しい・・・♪」 「なっ、何がっ?」 未夢はハンカチで頭の汗を拭きながらそう言った。 「しょっちゅう喧嘩してるのに、正に喧嘩するほど仲が良いってやつぅ〜? ニクイねこのっ。」 ななみが未夢をからかった。 「ななみちゃん、西園寺くんに聞こえちゃうよ〜・・・。」 綾が小声でななみの耳元で言った。 「西園寺くんの反応だって知りたいじゃんっ。」 「もうっ!二人ともいい加減にしてよ〜っ・・・。」 未夢は恥ずかしそうに言った。 「んじゃあっ、今回はまあ潔く引いてあげるよ、未・夢♪ 王子様を大切にしなよ〜!?」 そう言うとななみも綾も席に戻っていった。 未夢は苦笑いして立っていた。 もう鐘が鳴った。時計を見るともう授業の時間だ。席に戻ろうとした時、彷徨と目が合った。 「未夢、もう鐘鳴ってるぞ。んなトコで突っ立ってないで早く座れ。立ちたいなら廊下が お勧めだ。」 「わかってるわよ!彷徨細かい!」 クラス中に聞こえる声でそう言った。クラスの皆は笑っていた。クリスと望は例外。 「はいはい。光月さんも西園寺くんも仲良しさんなのは知ってるから、静かにしなさい。」 水野先生がそう言って入ってきた。これからまたいつもの学校生活が始まる。